第42話 探偵

母がそんな電話をしているのを聞いたほんの数日後の事だった。土曜日の朝。リビングで、父さんの大声が響いた。

「おまえ、おまえ一体何やってんの?なんだよこれ。なんで、なんで、、、」

「あたしが気づいてないとでも思ってたわけ?もう3年は続いてるでしょ?」

「続いてるってなんだよ。俺はおまえが家にいない時とか、何も家事私ない時に、寂しくて辛くてこの店に行ってただけだよ」

「へー。店に行ってるだけの客を自宅に連れ込むの?このママさんは」

「だから、俺が泥酔しちゃった時だけ、、、」

「あんた本当、馬鹿なんじゃないの?絶対許さないからね。離婚して!」

「は?おまえ何言ってんだよ!直人のことはどうするんだ?あいついま受験で一番大変な時だぞ。こんな時に親が離婚だなんて可哀想だろう!」

「ちょっとにゃとのこと持ち出さないでよね。とにかく別れて。慰謝料は500万、親権はもちろんあたしね。あんたの不貞が原因で離婚なんだから、当然でしょ。って言ってもあんた名義の貯金なんてないから、親から借金してでも払ってよね」

「待てよ、不貞ってなんだよ!俺は何にもしてないし、、、」

「ぶっちゃけどうでもいいのよ、本当はどうかなんて。でもこの写真が動かぬ証拠だからね。とにかく離婚して」

「だいたいママの自宅なんてなんで分かったんだよ。それに、こんな写真どうやって、、、」

「は?あーあ、探偵だよ。探偵。高くて迷ったけど、確信してたから、あんたの浮気。案の定、あっという間に証拠取れたからねえ。離婚ね」


僕はリビングのドアの前で呆然と立ち尽くしていた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る