第49話 再婚宣言(まだ離婚してねえ)
「にゃとー!やったよー!お母さん田上と結婚するよ!にゃとのおかげ!ありがとう」と母はいった。
理沙子さんに諭されて、ハムレットの文庫本をお守りにポケットに入れて、俺は家に帰った。
自分のせいで息子が自殺未遂してやっとの思いで帰ったというのに、この女は満面の笑みを浮かべていた。
「これから忙しくなるよー。まずは離婚を先に進めないとね。苗字が何回も変わるのやだな。世間体悪いよね〜。ちょっと弁護士に相談するわ。できるだけ早く結婚しなくちゃ!あ!家も欲しいな!石井からの慰謝料頭金にすればいいか。ローンは田上に払わせて、、、大丈夫だよにゃと、あんたの人生は私が守ってあげるから。」
「まじで?じゃあさ、俺、親が変わるだけでも嫌だからせめて学校は変わりたくないんだけど」
「何言ってんのよ、この辺に住めって?うーん、、、ま、いっか。私もそのほうが楽だし、離婚の原因は石井にしてるし、不倫されて離婚して辛くてそしたら田上と運命の出会いして再婚した!これならいいじゃん!しかも今よりセレブになるんだしさ、駅向こうのエリアにしよう!学区も変わんないし。」
俺はただ、じいちゃんちのそばにいたかった。理沙子さんも言った。逃げ込める場所が近くにあるといいね。って。本当の孫じゃないことを、この女は絶対バラさずに養育費を取り続けるつもりだ。だったら俺はじいちゃんちへ、行ける。
「今夜は田上と三人で食事いくよ。にゃと盛り上げてよ。たのむね〜」
いそいそとバスルームに向かうあの女の後ろ姿に、心の中で唾を吐いた。
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