第36話 祖父母

義実家、と母は呼んでいた。

僕の父方のおじいちゃんとおばあちゃん。この辺りでは昔から結構名家、というのか、長く住んでいて大きな家だ。僕は長男である父さんの一人息子なので、いつかこの家を継ぐんだよ、と、おじいちゃんによく言われて育った。僕はそれを嬉しく思っていた。お墓まいりもおじいちゃんおばあちゃんとよく行った。僕のご先祖様が眠っている。いつかは僕がこの墓を守っていく。


僕らは家族3人で年始の挨拶に行った。

豪華なおせち料理を食べながら、父さんと母はとても仲よさそうだった。

「みほさんお仕事は忙しいの?」

「ええ、まあ」

「直人もそろそろ受験だし、少しセーブしたら?祐介も帰ってくるんだし」

「はい、そうですね」

「直人は、どこ受けるんだ?」

「おじいちゃんと父さんと同じ高校」

「え?そうなのか?」

「ちょっとにゃと!母さん聞いてないけど?」

「話してねーから」

、、、。聞きもしなかったくせに。僕の志望校なんて。

「私立だから金がかかるなあ。祐介、がんばれよ!」

「大丈夫。会社も持ち直したし。直人、好きな学校に行けよ!父さん頑張るからな」

「あら?みほさん、顔色が悪いみたい。大丈夫?」

「ごめんなさい、ちょっと朝からめまいがして。先に帰らせてもらいます」

「そう?気をつけてね。夕飯はこの子達に持たせるから寝てなさい」

「はい。ありがとうございます」

母は立って、徒歩5分の自宅へと帰っていった。


それからの時間はもっと楽しかった。父さんとおじいちゃんとたくさん話した。結局夜になってしまって、夕飯もご馳走になり、父さんと家に戻ったのは夜10時過ぎだった。


母は家にいなかった。

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