第11話 ゆれる

布団を被ったまま、じっとしていたけれど眠れず、2人は時計が4時をすぎても部屋には戻らなかった。僕の脳内ではさっき聞いた話がぐるぐるぐるぐるまわっていて、いてもたってもいられなくなった。なぜか、父さんのことを思い出した。父さんの為に、僕は勇気を出さなくちゃいけない。なぜだか、そう思った。


今度は、とても冷静な気持ちで部屋を出た。そのままロビーには行かずに、車が停めてある下の階へ、僕は自分でも信じられないくらいしっかりした足取りで降りていった。階段の途中から見下ろすと、乗ってきた例の屋根のあく黒い外車が停まっていた。そうあの車で僕はあの2人とこの船に乗った。間違いない。あんなクルマ、他では見たことがなかったから、見間違えるはずがなかった。


車の周りに男が3人いる。いや、4人か?まだ薄暗いのではっきりしないが、何人かが確実にいることがわかる。その全員が、しゃがんで、なにやらヒソヒソと会話をしながら交互に窓から中をのぞいていた。僕は近づくのが怖くなりそのまま階段の途中から動けなくなった。すると突然、あの車がグラグラと動き出した。僕はあの男たちが揺らしていると思った。一体なぜ?と思った瞬間、男たちが一斉に体を伸ばして中を覗き始めた。


それからどのくらいの間、僕はそこにいたのか。どのくらいの間、クルマは揺れていたのか。


車の周りにいた男たちが笑いながら走り去ったので、僕はハッと我に帰った。車の揺れは止まっていた。僕は走って車の方へ近づいた。何があったのか、確かめたかった。もしかして中には母がいて、あの男たちに何かされたんだとしたら。考える前に、僕は窓から中をのぞいていた。

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