第51話 さよなら、可愛がってくれた人たち
それからはものすごいスピードで俺の世界は変わっていった。田上から婚約指輪をせしめた母は、とにかく離婚!と全てを猛スピードで進めはじめた。
俺は学校へ行くフリをしてじいちゃんの家に行った。
じいちゃんもばあちゃんも、泣いた。
父さんも。
俺は、すごく申し訳なく悲しく今まで可愛がってくれた人たちへのどうしようもなくやるせない気持ちを、吐き出す場所がなかった。泣けなかった。この人たちの前で、自分を生んだ女が騙し続けて今も金をむしり取ろうとしているこの人たちの前で、俺は、泣いちゃいけないと思った。
「学校は変わらないし、じいちゃんたちさえよかったら、俺はまた、ここへ来たいと思ってるから」
「お前が長男の長男であることには何も変わりないよ。じいちゃんはいつでも待ってるから。困ったことがあったら、いつでも来なさい」
「引っ越してもこの近くに住むの?なんだか、気まずいわねえ。あなたもここへ来ると、またみほさんが怒るんじゃないかしら?もう私は悪いけどみほさんとは会いたくないのよ。考えただけでもおばあちゃんは胃が痛くなって、何も食べられなくなるの。直人には会いたいけど、、、ごめんね」と言ってばあちゃんは泣きながら二階へ行ってしまった。
「送るよ、学校、行け」
と言って父さんが、一緒に学校までの道を歩いてくれた。父さん、父さん、俺の父さん。
「直人、本当にごめんな。俺は最後まで粘ったんだが、向こうが離婚するの一点張りで、もうどうしようもなかったよ。なんでこんなことになっちまったのかな、、、お前らのために働いて、お前らのために一生懸命やってきたつもりなんだけどな、、、直人には本当にすまないと思う。親権も絶対譲らないって言われたよ。俺もかなり粘ってるんだけどな。ばあちゃんにももう諦めなさいって言われたよ。でも、父さんはお前の父さんだから。養育費はちゃんと払うからお前は行きたい進路を進みなさい。何も心配いらないからな」
「うん、、、ありがとう」
父さんは来た道を帰っていった。
振り向いて見たその背中は小さく丸まって、僕の父さんは、ちいさくちいさくちいさくなって、消えていった。
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