第6話 5年生の夏休み
小学五年生って、嫌な年だ。身体が大人になっていくのに、友達はみんなまだ心の中が子供だ。だから色んなことがアンバランスで辛くて、その上勉強もだんだん難しくなって、イライラして自分ではもうどうしようもないのに誰も助けてくれない。
父さんに相談したいことがたくさんあったけど、勝手ないやらしい想像で父さんを嫌悪していた自分が許せなくて、僕は父さんに頼ったり甘えたりできなくなっていた。
そんな、僕にとっては辛いだけの日々を過ごしていた時、僕の心が完全に壊れる事件が起こった。そう、僕は、壊れてしまった。
「休みとってって言っといたでしょ?にゃとのためなんだよ?私だって取材の仕事断ってまで日程開けたのに、なんで休めないのよ?」母が父さんに怒鳴っていた。また僕を引き合いに出すのかよ、と、半ばあきれた気持ちで自分の部屋に行こうとしたら、
「直人、ごめんな。いま父さんの会社ちょっと業績がまずくてな、どうしても休めないんだ。悪いけどこの夏の旅行は母さんと二人で行ってくれ」
「僕は別に旅行なんて行かなくていいよ。父さん、仕事頑張って」
部屋に入って、しばらくしてウトウトし始めた頃、母が部屋に入ってきた。えらく上機嫌だ。
「にゃとー!旅行行くからね!なんと行き先は九州だよ!楽しみだね!」
「いいよ。僕は行かない」
「何言ってんのよー!絶対行くよ。もう連れていくって言ってあるんだから、行かないとか許さないからね!あー楽しみ。じゃおやすみ」
あの女は、それ以上何も言わずに出て行った。どうせ行かないなんて許されないんだ。自分の思い通りにならない事を、あの女は決して受け入れないんだから。
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