高級宿の中

「港からしばらくゆっくり出来てなかったから、今夜はゆっくり寝よう。その前に汗を長そう。アリサちゃんたち、先にお風呂に入ってきていいよ。僕はあとで入るから」


部屋の中を一通り観察していた四人に入浴を促す。部屋の中にも入浴設備はあったが、この宿には大浴場があるらしいから、そちらを勧めてみた。


「おにーさん、じゃあ、うちら先に大浴場にいってくるねー?」


四人はきゃいきゃいはしゃぎながら、大浴場へと向かった。


「ふ~。一人になったな~」


僕はふかふかのベッドの上に仰向けに寝転がった。


「帝国の首都まで来てしまったわけだけど、王女様は僕たちにここで何をさせる気なんだろう?」


フル=フラン帝国にいるアイシャという王女様の右腕の人から指令が来るらしいけど、僕たちに何ができるのかさっぱりわからない。


そういえば、急ぎだったからスローンの実家によるのも忘れてたな。しばらくは帝国に滞在することになりそうだし、帰省はしばらくお預けだな。


「実家って言っても、全く知らないしな……。シュンがいつから実家に帰っていないのかはわからないが、少なくとも俺が転生してからは一度も帰っていない。親兄弟についてはリエから聞いてある程度の知識はあるが……」


俺がシュン・スローンになってからまだ1年ちょっと。この世界についてもまだまだ知らない事が多い。転生前の地球なら、文化の違いは多少あれど、ほとんどどこの国もそう大して変わらないだろうけれど、この世界には根本から違う国や地域、文化があるから新鮮だ。まさに、知らない事だらけの世界だ。


「シュン。シュン!あの子たちが戻ってくる前にこの大きな宿を探検しましょ!」

「探検て……。リエは道具袋から出ると目立つから、袋の中に入れっぱなしになるよ?それでもいいなら、ちょっと宿を探検しようか」

「道具袋の中は窮屈だから嫌だけど、仕方ないなぁ」


僕はリエの入った道具袋を背負い、部屋を出た。部屋の鍵は僕が持ってるからアリサちゃんたちが戻ってくる前には戻らないとな。


――首都パルドン 高級宿 廊下

高級宿の廊下は高い天井に大理石の床、あたり一面ピカピカだった。いかにも高級そうな造りになっていた。


部屋も広いからドアとドアも離れている。これなら、部屋で多少騒がしくしても聞こえなさそうだなーっと思いつつ、廊下を歩く。


誰とも出会わないまま、階段の踊り場に着いた。この階は二階でこの宿は三階建てだから、階段は上と下どちらにも繋がっている。大浴場は1階だから、階段を下って行けば見つかるだろう。


「ぐるっと二階を回ってきたけど、特に面白いものはなかったな。リエ、満足か?」


リエが道具袋の中から返事する。


「どんな建物かを確認したかっただけよ。シュンもいざという時のためにしっかり構造を覚えておくのよ!」


リエは随分慎重みたいだ。リエのこういうところありがたく思う。まだ、アリサちゃんたちが戻ってくるまでは時間がありそうだったので、とりあえず3階に上がってみることにした。


三階も造りは全く同じだった。建物全体は四角い形となっていて、廊下があり、廊下の左右に部屋があるホテルやマンションと同様の造りだ。


「三階も特に変わったところはないし、自分の部屋に戻るか。一階はアリサちゃんたちが戻ってきてから大浴場に行く前に調べよう」

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