冒険者ギルドでやり返し

――冒険者ギルド


 道中、四人に褒めそやされた僕は、気分が良いまま冒険者ギルドに来た。


 冒険者ギルドの中は扉から入ってすぐ左側にギルドの受付がある。


受付以外の場所は、木製のテーブルと椅子がいくつか置いてあって、簡単な食事ができるようになっている。


パーティーの待合の場所ということでそういう造りなのだろう。


 夜中は酒場に早変わりして、冒険者ギルドで知り合った仲間とそのまま飲み食いできるため、比較的すぐに親しくなれる。良い場所だと僕は思う。


 『シュン』がSランクパーティーに居た頃はどうだったか知らないが、今の冒険者ギルドの中を見る限りは、皆楽しそうに食事したり酒を飲んだりしている。


「おまえ……、シュン! さっきの教会といい、俺たちの後を追いかけるのをやめろ!」


 また、イドリオたちSランクパーティーと出会った。傷を癒し、報酬をもらいに来るのだから、ある程度行く道が被るのは仕方ない。


「あんたたちなんて追いかけてないやい!」


シーナちゃんが怒って言い返した。


「私たちは、今回のクエストを失敗してしまいました。シュン、どうぞ、報酬を受け取ってください。私たちも精進が足りなかったようです。イドリオ、もう行きますよ」

世界最高の僧侶ステフィアが今回は間に入ってくれた。すんなりと、ギルドの受付への道を空けてくれた。


しかし、イドリオやエグバートは納得がいかないのか、僕の傷ついた肩にわざとぶつかるようにして、通り過ぎていった。


「ステフィア殿はああいっておるが、わしはお前たちに助けられたなどと思っておらぬぞ。今回のクエスト報酬なぞなくても、わしの商人としてのスキルがあれば、簡単に稼げるわい。せいぜい、今だけ喜んでおれ」


大商人レベル40の男がすれ違いざまに捨てゼリフを吐いて去っていった。


Sランクパーティーが冒険者ギルドを出るのを見届けてから、僕は冒険者ギルドの受付のお姉さんにクエスト達成の報告をした。



「これが今回のクエスト報酬です。リアン=ランベスさんからの報酬とは別に、王宮からスコーフェル洞窟に住み着いた悪党の討伐クエストも解決していただいたため、こちらの報酬もあります。どうぞ、お受け取りください」

「え! あのネクロマンサー、王宮から討伐依頼が出ていたのか」

「はい、だから先ほどのSランクパーティーさんたちがクエスト失敗の報告をしてきたんです。今まで失敗なんてしたことなかったSランクパーティーさんでも解決できなかったクエストを解決してくれたなんて、ギルドとしても嬉しい限りです」

「やったやった! リアンちゃんからの報酬と合わせたら、うちら大金持ちじゃない!? この前のクエストの報酬もたくさんだったし、おにーさんと一緒に居るだけでどんどんお金が増える!」


 確かに、僕も驚いている。とんとん拍子にクエストが達成され、報酬をもらえている。ちなみに、リアン=ランベスお嬢様から金貨100枚もらったのに、更にクエスト報酬で金貨50枚もらった。更に、王宮からの討伐クエストで更に金貨100枚もらって合計で金貨250枚。日本円に換算すると750万円相当!


「五人で割っても結構な額になるね。そうだ! このお金を元手に僕たちで商売を始めよう?」

「商売? 私達は学校を卒業したばかりで社会生活には慣れていません。シュンさんにお任せします」


 ユキちゃんは僕の言う通りにすると言ってくれている。アリサちゃん、シーナちゃん、メイムちゃんもそれで良いと言っている。ほとんどシュンさんの手柄だから好きに使ってほしいと。


「大丈夫。僕は商人レベル20だし、独自の商売知識もある。お金を倍にして返してあげるよ」


 そう、僕、いや俺、竹中平吾は元々日本人だ。日本にはあって、この世界にまだない商売で一気に儲けるんだ。


「とりあえず、この前市場に買い出しだな。荷車の用意しないと。アリサちゃんたちもついてくるかい? クエストじゃないけど、お金の使い道を知っておきたいでしょ?」

「うん! 面白そう! みんなもいいよね?」


 アリサちゃんが元気よく返事をして、他の三人も頷いている。問題なさそうだ。


「じゃあ、僕は明日朝、荷車を押して市場に行くから、先に市場で待っていて!」


 僕たちは、翌朝市場で待ち合わせの約束をして、帰宅した。

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