大金ゲット!
――王都ロンド 貴族街 ランベス邸
僕たちがランベス邸の鐘を鳴らすと、執事のアルフレッドさんがすぐに出てきてくれた。
僕たちの傍には探していたワンちゃんの白狼が居る。アルフレッドさんはこんな短期間で発見なさるなんて……、と驚愕と感嘆の表情だ。
「お嬢様をすぐお呼びします」
アルフレッドさんは館の門前まで僕たちを連れて来てすぐにリアン=ランベスお嬢さんを呼びに行った。少しでも早く朗報を伝えたかったのだろう。
「セラフィーヌ! ああ、なんてこと!」
リアン=ランベスお嬢さんが白狼の名前を呼ぶと、白狼は彼女の元へ駆けて行った。彼女は駆け寄ってきた白狼を撫でてあげていた。
「こんなに早く連れ帰ってきてくれるなんて、思いもしなかった。貴方達には感謝しかないわ。アルフレッド! この方たちに充分なお礼をしてあげて」
「畏まりました。お嬢様」
アルフレッドさんは館の奥の部屋へと引っ込み、また出て来た。手には革袋を持っていた。
「これは、今回のクエストのお礼です。冒険者ギルドに連絡を入れておきますので、クエスト報酬はギルドから別途頂いてください」
僕はずっしりとする革袋の中身を見てみた。
「おにーさん……。こ、こ、これ金貨だ!」
覗き込んだシーナちゃんが驚くのも無理はない。このずっしりとした重み、100枚はある。
この世界には、金貨、銀貨、銅貨、石貨の四種類がある。金貨1枚に対し、銀貨30枚、銅貨300枚、石貨3000枚。金貨、銀貨、銅貨は純金銀銅ではなく、不純物を混ぜたもので価値は純金などより劣る。
街の衛兵の日当は、銀貨6枚。農民なら日当は銀貨3枚。一日の食費は、三食質素な生活で、銅貨10枚。
銅貨1枚が100円ぐらいの価値のため、仮に金貨100枚だとすると、300万円!
「300万円!? あ、いや、金貨100枚だなんて、こんなに良いのですか!?」
僕はあまりにも高額のお礼をもらって、動揺していた。ワンちゃん探しでこんなにもらってしまうなんて、とんでもないことだった。
「セラフィーヌは、見た目どおり、特別な狼でして。このランベス家の守り神のような狼なのです。代々、ランベス家に継がれてきた高貴な白狼。どこも傷ついていない完全な形で連れ帰ってきてくれるなんて、どれほどの感謝かを伝えるためにも受け取ってください。それはお嬢様の貴方達への信頼の証です」
アルフレッドさんは深々とお辞儀をした。僕たちには敬礼よりもその方が心に来るものがあった。
「そこまで仰るなら受け取らないわけにはいけませんね。ありがとうございます」
僕たちがお礼を受け取り、館の外に出ようとした時、リアン・ランベスお嬢様が声をかけてきた。
「あなた! そう男性のあなた。あなた、どこかで見かけたことがあると思ったら、スローン家の四男のシュン・スローンじゃない?」
僕は初めてラストネームを呼ばれて驚いた。この娘、『シュン』の事を知っていたのか!
「はい。確かに僕はシュン・スローンです。『腰掛』と呼ばれるスローン地区を治めているスローン公の四男です。」
「まあ、なんてことなの。スローン公爵は、私の家よりも上の爵位を持ちますわ。家督を継いではいないとはいえ、あなたもスローン家の一員。私随分無礼な真似をしてしまいましたわ」
「お気になさらず、リアンお嬢様。今の僕は一介の冒険者です。だから、気を遣わず、そのままで接してください」
リアン=ランベスお嬢さんは頬を染めて僕を館から送り出してくれた。
僕たちが館から出た直後、アリサちゃんとシーナちゃん、ユキちゃんやメイムちゃんまで僕に顔を近づけ、迫ってきた。
「シュンさん! 貴族だったんですか! しかも、この広大な敷地のランベス侯爵よりも上の爵位、あのスローン・ストリートを治めている、スローン公の四男だったんですか!」
「おにーさん、すごいすごい!」
「人とは違った雰囲気を持つとは思っていましたが、まさか大貴族のご子息だったとは……」
「私達にこんなに親しく接してくれているのに、大貴族だなんて。シュンさんって本当に優しいんですね」
僕は四人に一斉に寄られてわちゃくちゃにされた。時折あたる膨らみの感触を楽しみながら、冒険者ギルドへの道を行くのだった。
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