洞窟探索2

トンネルの中に入ると、真っ暗だったから、レベル10のウィル・オ・ウィスプを召喚した。辺りが照らされ、道がわかるようになった。


「私達いつも真っ暗なところですね……」

「ダンジョンばかりだね。まぁ、得てして何か起きるところはこういうところばかりだよ。それよりも。お嬢様のワンちゃんを探さないと。ケルベロス、臭いはどうだ」


ケルベロスは三つの頭で臭いを嗅いでどこで獣の臭いがするかを嗅ぎわけている。レベル1の召喚狼よりも嗅覚が三倍以上になっているから、仮にあの白狼が遠くに行っていても見失うことはないだろう。


「ぐるるるるるるるるるるるるるる」


ケルベロスが唸り声をあげだした。どうやら、魔物のお出ましのようだ。


「何かいるの!?」

「静かに。なるべく音を出さずに近づいてみよう」


少しずつ近づいていくと、キン、キィンと高い音が聴こえてきた。これは金属がぶつかる音だ。


僕たちは僅かな灯りのもと、曲がり角が見えてきたので、曲がった。すると、そこですでに戦闘が始まっていた。



わらわらと群がるスケルトン・ソルジャーに、その後ろでそのスケルトン・ソルジャーを召喚している魔術師らしき黒いローブに身を包んだ男が居た。


大きな広間いっぱい100~200体は居るかと思われるスケルトン・ソルジャーと戦っているのはSランクパーティーのリーダーで二刀流剣士のイドリオと重騎士エグバートだ。あとの三人は後ろに控えている。


「へっ、こんな雑魚アンデッドじゃ相手にならねぇよ!」

「そのとおり、我等二人だけでも充分」


イドリオとエグバートはその強気な言葉どおり、スケルトン・ソルジャーごときでは全く相手になっていなかった。


「フフフ、それなら、これはどうだ。ネクロマンシー!リッチ!」


黒いローブの男がネクロマンシーの魔法を唱えると、髑髏の頭を持つボロボロのローブをまとった魔術師が現れた。


「なに! アンデッドの最高峰のリッチだと!?」

「アーサドラ! 君の出番だ!」


世界最高の魔法使いアーサドラがイドリオとエグバートの後ろから魔法の詠唱を唱える。それと同時にリッチーも魔法を詠唱し始めた。


「これでも! ファイアーストーム!」

「……」


リッチも何事か詠唱したが、聞き取れなかった。しかし、すぐにわかった。


リッチの手から紫色の炎が放たれる。


アーサドラのファイアーストームとリッチの闇の炎がぶつかる。


「リッチだけに気を取られているな。わしがまだ居るぞ。ネクロマンシー! レイス!」


黒いローブだけのような魔物が更に召喚された。


「あれは、霊体だ。物理攻撃は聞かない。アーサドラはリッチの相手で手いっぱいだ。ステフィア、浄化を頼む!」

「ごめんなさい。スケルトン・ソルジャーを浄化していくだけで手いっぱいよ!」

「何! レイスの詠唱が始まっている。このままでは!」


Sランクパーティーが危機に陥っていた。


イドリオとエグバートは蘇り続けるスケルトン・ソルジャーを食い止め、ステフィアが一体ずつ浄化していく。アーサドラがリッチの魔法を抑え込む。


レイスの魔法は素通りでじりじりとSランクパーティーの体力を奪っていく。


商人のおっさんは隅っこで縮こまっている。


やはり戦闘職ではなかったか。


「シュンさん、どうします? 助けに入りますか?」

「そうだね。スケルトンやレイスぐらいなら今のレベルのユキちゃんたちでも相手になるだろう。リッチやネクロマンサーは僕に任せて。イドリオたちはもうボロボロだ。直に倒れるだろう」


僕はレベル34ケルベロスの強さを見て見たかった。ドラゴン以上の召喚術は全く使った事がなかった。ほとんどのモンスターはドラゴンで充分倒せるレベルだったからだ。


鑑定眼スキルで見たところ、今あそこに居るリッチーはレベル30、ネクロマンサーはレベル35。スケルトン・ソルジャーはレベル10、レイスはレベル15だ。


ユキちゃんは炎の魔法が使えるし、アリサちゃんも炎遁の術が使える、ヴァルキリーのシーナちゃんや聖女のメイムちゃんもアンデッドキラーのような能力だ。


僕の新パーティーはアンデッドや霊体のモンスターに対しては無類の強さを誇るのだ。


地獄の番犬ケルベロスは三つの頭からそれぞれ炎、吹雪、雷撃を吐く。今居るスケルトン・ソルジャーもレイスもリッチも全て焼き尽くし、凍えさせ、黒焦げにできる。


「よし! 行け! ケルベロス!」

「ぐるるるるるるるるるるるる、ぐわぁぉおおおおおおおおおおおおおおお」


今にも倒れそうだったSランクパーティーたちの前に、唸り声をあげて、ケルベロスが現れた。

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