洞窟探索

――王都 上空


「シュンさん、こ、怖い」

「大丈夫。しっかり手綱を握っていて。足もとも固定してあるから、落ちる心配はないよ」

「それー、はいやー、ペガサス!」


シーナちゃんはやはり感覚を掴んだようで、しきりに空を駆けまわっていた。僕たちはグリフォンの背に乗って王都上空から地上を眺めていた。


「大型の白い狼なんて見当たらないなぁ」

「平地はよく見渡せてるけど、居ないから、山の中や森の中かもしれないね」


空は広大で、どれだけ飛び回っても何の障害もない。上空に行くほど、風がきつく、気温が下がってくるから、ある程度の高さまでで止めている。


王都周辺をぐるりと一周したが、ワンちゃんは見つからなかった。


「もう少し探したら、一旦地上に下りよう。僕の魔力もそう長くは持たない」

「は~い。おにーさんのいう通りにしまーす」


僕たちが捜索を一旦止め、地上に下りようとした時、アリサちゃんが突然大声をあげた。


「あ、シュンさん!! あそこの禿山の洞窟に白いワンちゃんが入って行こうとしてる!」


アリサちゃんが指し示したところは、王都ロンドの西に位置する山岳地帯スコーフェルの入り口付近の洞窟だった。


以前の炭鉱跡とは異なり、道を通すために出来た洞窟だ。ロンドから西へ行くためには大きな山岳地帯を上っていくしかなかったところ、穴を掘り進め道にした洞窟だ。


名前をスコーフェル洞穴という。ただし、中は薄暗く、隠れるには持ってこいのため、魔物が住み着きやすいため、通り抜けるためにはそれなりの護衛が必要だ。


「場所はわかった。ここからは地上に下りて進もう」


僕たちは洞窟より少し手前のところに下りた。全員下りたことを確認して、召喚獣たちを送還した。


「召喚! 狼!」


僕は新たに狼を召喚し、臭いを追跡させた。確かに獣の臭いがするようだ。


「よし、行こう。あの洞窟には魔物もたくさん居るはずだ。みんな、注意を怠らないで」

全員が頷き、戦闘態勢で洞窟の中へ入った。


「召喚狼がもっと奥の方から獣の臭いがすると言った仕草をしている」

「もっと奥に行くのですか? この洞窟、いえ、トンネルの中はレベル20クラスのモンスターが多いと聞いています。以前のゴーレムや装甲ムカデと同レベルのモンスターがうじゃうじゃ生息しているなら、私たちだけで捜索を進めるのは危険では?」


冷静で賢明なユキちゃんが僕たちの戦力分析を行い、危険だと判断するのも無理はない。レベル1の召喚狼だけじゃ、心細いよな。


「この前のようなヘマはもうしないさ。狼、送還。召喚、ケルベロス!」


僕が召喚陣を描き、召喚の言葉を発すると三つ首の地獄の番犬、ケルベロスが現れた。姿こそ禍々しいが僕のいう事を忠実に守る頼もしい仲間だ。


「え、ケルベロス!?」


メイムちゃんが驚いていた。神話に詳しければ、地獄の番犬を召喚できるなんて、って思うよね、やっぱり。


僕も最初召喚した時びっくりしたもの。


「そう。地獄の番犬ケルベロス。レベル34で召喚できるようになるんだ。戦力としてはドラゴンよりも上だよ」

「おにーさん! ほんとにすごいね!」


ユキちゃんも感心していたが、あえて僕には伝えなかったようだ。奥ゆかしい子だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る