二人きりのクエスト4
――王都ロンド 地下下水道
悪臭が漂う王都の下水道。僕たちは用意していた頭から被るタイプの頭巾マスクをすっぽりと被り道を進む。
「うえぇ、臭いし、汚いよぅ」
ここは女の子が来るような場所ではないな。不衛生で臭いからクエストだけではなく、通常狩場としても超不人気だな。
王都から出なくて済むうえ、普段は巨大ゴキブリと大ネズミ、あとはアンデッドがたまに居るぐらいの狩場だから、初心者冒険者には良い狩場のはずだが、この場所も倒す敵もどちらも気持ち悪いから誰も狩りにはこない。
だから、定期的に王国軍が駆除隊を結成して綺麗に掃除するんだ。
「暗がりだけど、今回はウィル・オ・ウィスプは使わない。ケイブ・アリゲーターに出くわした時に高レベル召喚獣を召喚できないと困るからね。シーナちゃんは、僕の後ろでしっかりついてきてね。リエ、背後の警戒は任せたよ」
「はいはい。わかってるよ、シュン」
「いつもおにーさんに甘えちゃってるなぁ……」
がさがさがさ。
僕たちが喋っている間に早速黒光りする大嫌いな生物が出て来た。僕は言葉を発さず、サラマンダーを召喚し、火炎を放射した。
「KYIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIII」
不快な音をあげて燃える黒い虫。巨大ゴキブリはレベル7、大ネズミはレベル8。初心者冒険者ならなんとか倒せるレベルだ。さすがにレベル1だと簡単に食われてしまうけど。
「きもちわるい……」
シーナちゃんが青い顔をして燃え盛る虫を見ていた。アンデッドも気持ち悪かったがゴキブリはまた違った気持ち悪さがある。
サラマンダーが巨大ゴキブリを灰と化したあと、僕たちはその灰を避けて地下下水道の奥に進んでいく。
道中、何匹かの大ネズミやゴキブリを見た以外は、大物が現れそうではなかった。直に下水道の中央部の下水が溜まっている場所へとたどり着いた。
「うう、おにーさん。何か出そう」
広くて、大きな下水が流れ込み、うねっている。もうどうみても、ここに何か居るとしか言い様がない。
僕がサラマンダーを送還し、新たな召喚獣を召喚しようとしたとき、下水が大きく蠢き、下水が流れ切ると、それは姿を現した。
六つ目で大きく裂けた口に、広大な地下下水道の天井にまで届きそうな体躯と、下水の中から二本足で立ち上がっている、ケイブ・アリゲーターまさにそれだった。
「やばい! シーナちゃん、下がって! 絶対に攻撃を受けちゃダメだ。リエ! シーナちゃんを向こうに連れて行って!」
「わかってるわよ! シュン! さっさと倒しなさいよ!」
リエがシーナちゃんを後方へと誘導し、僕は召喚を続けた。
「ケイブ・アリゲーター、レベル30か。なら、こっちは召喚!ゲルボロス!」
レベル35召喚獣ゲルボロス。
六本の腕を持ち、四つの目を持つ鬼のような顔の、四足歩行の人型獣。ドラゴンやケルベロスよりも強大なレベル35召喚獣だ。
「ぐるあああああああああああああああああああああああああああああ」
召喚した途端、ものすごい大きな咆哮をあげるゲルボロス。
「行け! ゲルボロス! ケイブ・アリゲーターを屠れ!」
咆哮をあげて、ケイブ・アリゲーターに跳びかかる。
身体のサイズでは負けていない。巨体と巨体が下水の中で激しくぶつかり合う。
「お、おにーさん……、その召喚獣、こわい……」
僕はシーナちゃんの傍にかけより、手を握ってあげた。
「大丈夫」
「うん」
ゲルボロスの方が圧倒的に優勢だ。すぐに倒してくれるだろう。
しかし、そう簡単には行かなかった。
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