二人きりのクエスト3

「下水道の道中に生息する生物は……。突然変異した大ネズミにゴキブリ、スライム、あとはアンデッドが居るかもしれない、と。魔物などの駆除、除去は定期的に王国軍が実施しているみたいで、それほど数は多くない、はずか。しかし、最近下水道で孵化したと思われるケイブ・アリゲーターが育ち切って大暴れしている、か。なるほど、力がつくまでは大人しくしていたわけか」


 王都の地下下水道は、王都全域に行き渡っているため、とても広大だ。


 とてもじゃないが全域を管理するなんてことは無理なわけで、こういう大物がたまに紛れ込んでしまうのだ。


レベル30モンスター、しかも一体とは限らないとなるとSランクパーティーぐらいしか討伐できない。王国兵の中でもレベルの高い兵士はそう多くない。


 冒険者の中でもレベル40のSランクの他、レベル35以上のAランクたちがいるけれど、レベル30モンスターがどれだけ生息しているかわからない状態では、迂闊に近付けない。


 冒険には命がかかっている。


だから、自分がレベル40だからといってレベル40レベルの狩場なんていかない。


大体安全マージンとしてレベル10以上下の狩場でレベルを上げるんだ。


だって、失敗したら死ぬからね。


一応蘇生はできるけれど、100%じゃないうえに、死ぬと苦しい、痛い、本当に二度と体験したくない経験だ、と経験者はいう。俺、平吾の時に一度死んでるからね。


 と、いうわけで、この王都地下下水道ケイブ・アリゲーター討伐クエストは超不人気です。安全マージンに居るパーティーがSランクパーティーしか居ない。あとは、僕しか居ない。


「おにーさん……。そんなに大変なクエストなの?」

「あ、ああ。安全マージンに居るのが現在世界トップクラスのSランクパーティーのイドリオたちしか居ないからね。あとは、この僕、シュン・スローンだけ。レベル30モンスターだから一体ならドラゴンで抑えられるけど、もし二体、三体と居たらドラゴンだけでは倒せない。おそらく、ドラゴンやケルベロス以上の召喚獣じゃないと厳しいね」

「おにーさん」


 突然シーナちゃんが抱き着いてきた。小さな体が震えているのがわかる。


「大丈夫、僕が命に代えてもシーナちゃんは護り切るよ。ほら、行くよ」

「シュン! ガーディアン(守護者)クラスの習得条件満たしそうだよ! 能力石板を見て!」

「え? ガーディアン? この間召喚騎士クラス習得したところなのに? 何々他人を捨て身で護り切り、重傷を負った回数が5回以上の経験で習得。注意書きとして、いずれかのクラスが40以上であること。なるほど、炭鉱跡の装甲ムカデ戦、ゴーレム戦、スコーフェル洞窟での白狼の時、それでこの前の女王蜂戦、あと一回でガーディアン(守護者)クラス習得か。ガーディアンレベル1のスキルは「仁王立ち」。自分に対するヘイトがMAXになり、敵が自分しか攻撃してこなくなる」

「おにーさん、またクラス習得するの!? すごい!」


 僕も驚きだよ。


自分のことながら、次々にクラス習得していく。


習得していってからはレベルを上げないといけないけどね。


スペシャルクラスはいずれかのクラスがレベル40以上の条件のが多いのか。


レベル40から人生始まった感があるな。


「シーナちゃんたちもすぐにレベル上がるよ。スペシャルクラスを覚えるかは才能次第だけどね」

「シュン自体には才能がなかったはずだけど、召喚騎士とガーディアンの二つのスペシャルクラスはどこかの女神様からのプレゼントだと思うわ」

「おにーさん、良かったね! 神様からのプレゼントだよ、絶対!」


 あの女神様か。


そういえば、せっかく俺の事を好きだって言ってくれた女の子が見つかったのに死んじまったもんな。せめて、この世界では無双したいところだ。


 大喜びのシーナちゃんの頭をぽんぽんと撫でて、僕は地図を見て、王都の下水道への道へ行こうとした。シーナちゃんも機嫌よくついてきてくれている。


 さぁ、引き締めてかからないとな。超不人気クエスト、つまり危険度大クエストの始まりだ。

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