邂逅

――王都ロンド 王立女子寮前


「おはよう。みんな。ユキちゃんは体調大丈夫?」


朝早くから僕は女子寮の前に来ていた。行き交う女生徒に怪訝な顔をされたことは内緒だ。


今はアリサちゃんたちが出てきてくれたから通報は免れた。


「あ、シュンさん。もう大丈夫です。すっかり良くなりました。ご迷惑をおかけしました」


ユキちゃんは元気な笑顔を見せてくれた。


「その笑顔を見ればわかるね。良かった。あとは、メイムちゃんとユキちゃんのレベル上げだね。アリサちゃんとシーナちゃんはもうレベル15だから。二人はまだレベル10だもんね、まあ、すぐおいつくよ」

「はい、よろしくお願いします」


ユキちゃんとメイムちゃんがお辞儀をする。僕たちの話を聞いていたリエが割り込んできた。


「シュン。早く王宮に行くよ。遅れる事はない時間だけど、早く着いていた方が良い事がありそうよ」

「良い事? じゃあ、早速王宮に行ってみるか。みんな、王宮へ急ごう」

「はい!」


全員元気のいい挨拶が返ってきた。シーナちゃんが僕の方に走り寄ってきて腕を組んできた。アリサちゃんは逆の方の手を握ってきた。ユキちゃんはそんな二人を不思議そうに見ていて、メイムちゃんは自分も近寄りたい、みたいな顔をしていた。


僕は四人に囲まれ、女子寮を後にした。


――王都ロンド 王宮前


アカデミーストリートは元々王直下の土地だから、王宮までは近かった。それでも広大な王立地は広く、王宮まで1時間かかった。


「これが王宮……」

「うわー……」

「おにーさん……」


リアン=ランベスお嬢さんの敷地も広かったし、館も大きかったけど、王宮は桁違いの広さと大きさだった。


「門と外壁の遠い向こうによく見るお城が見えるんだけど、ここが門なのにまだあれだけの距離があるの? 道理でうちの店が流行るわけだな。こんなとこに住んでると市場まで出るのに何時間かかるんだ」


僕たちが門を眺めていると、衛兵がやってきた。


「お前たち一体何者だ! 名前と用を言え!」


僕は衛兵に事情を話した。


「なるほど。王宮から呼ばれたお客人でしたか。話は聞いています。どうぞ、お通りを」


衛兵が門を開けてくれた。しかし、お城ははるか向こうだ。


「王宮から呼ばれる時は馬車で来られる方が多いです。あなた方のように徒歩で来る方は珍しい」


衛兵さんが言うように馬車や馬で訪ねるのが普通なんだろう。なら、僕たちもそうしようか。


「なら、召喚!ペガサス!グリフォン!」


 いつものとおり、ペガサスにシーナちゃん、僕含む五人がグリフォンに乗ってお城の門まで向かった。


さすがにペガサスやグリフォンだと一瞬でたどり着いた。


ここでも衛兵に止められた。


「ペガサス便、知ってますよ! シュン・スローンさんのご一行ですね! 私どもも『密林商店』はよく利用させてもらっています。あのスローン家のご子息が斬新な商売を始めたと聞いて王宮内では話題に上がっています。何でも冒険者としても活躍し、あのリアン=ランベス様からも絶賛されているとか。いやぁ、今までスローン家の四男はSランクパーティーだったけどパッとしないという噂だったのに、やっぱりすごい御方だったのですねぇ」


衛兵が僕の話題をさも誇らしそうに語り始めた。


僕は恐縮してそれを聞いていた。


「あ、いけない。王宮から呼ばれているんですよね。どうぞ、お通りください。門の先にまた衛兵が居ますので、その者に城の中を案内してもらってください」


衛兵が門を開けてくれたので、アリサちゃんたちが門の中へ入っていった。


「グリフォン、ペガサス、送還!」


僕は召喚獣を送還し、遅れて門の中に入った。


門の中に入ると、黒いマントを靡かせている同じく黒い甲冑の青年が腕を組んで立っていた。


「お前がシュン・スローンか」


僕は名前を呼ばれたので、アリサちゃんたちに道を譲ってもらい、前へ出た。


「僕がシュン・スローンです。あなたは?」


僕が名を尋ねると腕組みしていた男は微動だにせず、名乗った。


「俺は王立騎士団第五騎士団長、オリヴィエ・アンダーランドだ。お前が元Sランクパーティーだったってのは知ってる。イドリオは昔俺と剣の腕を争っていた。奴は冒険者として名を馳せ、俺は王立騎士団で出世する。そう決めて、騎士団長まで上り詰めたんだ。しかし、最近スローン家の四男がイドリオたちSランクパーティーより活躍してるって聞いてな。どんな奴か見に来たってわけだ」


王立騎士団第五騎士団長。


それに、イドリオとタメを張るほどの剣の使い手。


なるほど、道理でものすごい威圧感のわけだな。


「それで、どうです? 僕がシュン・スローンですが」

「ははは、謙遜するな。召喚士だそうだが、剣の腕も相当なもんだ。なんでこんな奴がそこのお嬢ちゃんたちとつるんでるんだ。まぁ、いい。今日は顔見せだけだ。ただ、一つだけ言っておく。義勇軍志願は絶対しろよ!」


そう言ってオリヴィエは門から出て行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る