大繁盛そして経営者
――三日後
「うわぁ、目が回るぅぅぅ!」
商売は大繁盛だった。
口コミとチラシで瞬く間に王都中に広まり、貴族だけでなく、平民や王都の外れに住んでいる農民の人たちの間でも噂になり、注文が入ってきたのだ。
「王都って言っても、広いもんね。市場まで遠い人もいっぱい!居るし、だからこんなに注文が入るんだよぉ」
アリサちゃんがたくさんの商品をピッキングして梱包していた。
あまりにも注文が多いため、ドッペルゲンガーを二体召喚して、僕に変身させて手伝わせている。
それでも手が回らないから昨日から急遽人手を募集した。
アリサちゃんとメイムちゃん、ドッペルゲンガー一体がピッキングに追われている中、僕はバイトの面接に来た子の面接をしていた。
チラシの端っこにアルバイト募集と記載したところ、随分と応募が来た。
今事務所の前に五人ほど面接待ちをしていた。
「じゃあ、面接するけど、まぁ、基本的に全員合格。忙しいからね。アリサちゃんたちはレベル上げもしないといけないから、君たち五人にこれからは仕事を任せるよ」
僕は商売を始めて三日で経営者となるんだ。
アルバイト五人に店を任せて、僕たちは戦争が始まるまでの間、少しでもレベルを上げておく。
僕が挨拶をすると、灰色の髪色で短髪の小柄な少年が席を立ち、自己紹介を始めた。
「はい、スローンさん。一応、自己紹介させてもらうと、俺はパトリックと言います。歳は13だけど、飛び級で王立大学に合格したから、現在は大学生です。学費は奨学金で無料なんですが、生活費が足りないんで、バイトさせてほしいっす。ちなみに、ちまたでは、『天才』と呼ばれています」
「13で飛び級で王立大学合格なんてすごいじゃないか。本当に天才なんだね。専攻は何?」
「ええ、天才です。専攻は国家戦略戦術です。卒業したら、王国軍に入ってフル=フランの奴らに勝つべく尽力するつもりです。スローン公爵家もかつては武名で馳せた家柄。だから、ここに来させてもらいました!」
「そうなのか、実家の事まで知ってるなんて驚きだよ。これからよろしくね」
そこまで話すと、僕は店員の証として名札をパトリックに渡した。パトリックは受け取り、胸に名札を付けた。
「じゃあ、次の人、自己紹介よろしく!」
次の子は双子の女の子だ。二人とも金髪の巻き毛が特徴的な女の子。二人は一卵性双生児ということで瓜二つの外見だ。健康そうな体つき、アリサちゃんに似た感じだけど、アリサちゃんより色気がある。
「私はシャロリア、こちらはフィアルド。二人とも21歳です。なんだか面白そうな仕事だなぁ、と思って面接に来ちゃいました。もう採用なんですか?よかったぁ」
全員採用と伝えていたため、シャロリアちゃんとフィアルドちゃんは安心して笑顔をほころばせていた。僕はそんなシャロリアちゃんとフィアルドちゃんに名札を渡した。
「次は私かな。ジャスタス・ジャージャーだ。35歳。アルバイトから、ということだそうだが、私は商人レベル30だ。この先、この店をもっと大きくしたいと思っている。スローンさんと共同経営を申し入れする」
白いスーツに身を包んだスマートな男性だった。眼鏡をかけていて髪の毛もぴっちりわけられている。
共同経営ということだそうだが、まさに僕の思っていたとおり、商人レベルも高いし、打ってつけの人材がやってきてくれた!
「その提案、お受けしましょう。僕の本分は冒険者だから、店は商人レベルの高い方に任せようと思っていたところです。簡単な商売だから、すぐに慣れますよ。共に店を大きくしていきましょう!」
僕ががっちりとジャスタス・ジャージャーさんに握手すると、彼もしっかり握り返してきてくれた。これで、僕の店『密林商店』は大きくなるぞ。
ジャスタスさんにも名札を渡した。彼は名札を受け取るなりすぐに胸に付けた。誇らしげに名札を見せつけるような姿勢に、僕まで誇らしげになった。
最後の一人は、おばちゃんだった。
「わたしゃ、モーナだよ!あらまあ社長さん随分若くてかっこいいねぇ!旦那の稼ぎが悪いからわたしがパートに出かけないとやってられなくてねぇ。ここなら時間も融通できそうだし、時給も良さそうだったから、こさせてもらったよ。採用だなんて嬉しいねぇ」
僕の手を掴んでぶんぶんと振るおばちゃん。僕はにこやかな笑顔で名札を渡す。店にはこういうおばちゃんが一人は居る方が賑やかでいい。
これで、全員に名札を渡した。自分が思っていたとおりの人材が集まって嬉しい。
早速僕は、新人さんたちに仕事を覚えてもらうべく、実践まじりに説明をした。簡単な仕事だから、皆すぐに覚えられたみたいだ。
夕方頃には、もう僕たちが何もしなくても充分店が回る状態だった。
明日ジャスタスさんに僕の仕事を全て引き継ぎをして、僕たちは冒険にでることにしよう。
アリサちゃんたちの仕事も彼らに任せられるだろう。
こうして、僕たちのパーティーは盤石な稼ぎ口を手に入れたのだ。
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