召喚魔法について

――シュンの家


「シュン、シュン! 一体どうするつもりなの? 大量のワンちゃんたちを召喚して追跡でもするの?」

「それも考えたけど、もっと広い視野を持たないと、って考えたらやっぱり、上空からかな。僕も一度、空を自由に飛んでみたかったし、飛行モンスターを召喚して、空から探すことにするよ」

「私のようにひらひらと飛べれば召喚することもないのにね~。そっか。それなら比較的早く見つかるかもね、大型の白狼なんてこの付近の魔物ではいないだろうし」


 僕はなるべく軽装で、飛行モンスターに掴まれる手綱だけを持って、アリサちゃんたちと合流することにした。


――王都ロンド 門前


 僕が合流する頃には、もうアリサちゃんたちは門前に集合していた。捜索が目的だからか、みんな軽装で来てくれて好都合だ。


「遅れてごめん。みんな、早いね」


 アリサちゃんとシーナちゃんが剣の稽古の真似事をしていたが、僕が声をかけるとこちらに振り向いて手を振ってくれた。門のすぐ傍に居たユキちゃんとメイムちゃんは目で礼をしてくれた。


「シュンさん、これからどうするのでしょうか?」


 真面目なユキちゃんが深刻そうな顔で聞いてくる。


僕は大丈夫!と満面の笑みでそれを返す。


「こうするのさ。召喚!ペガサス!」


 僕が杖で召喚陣を描き、レベル20召喚獣のペガサスを召喚する。


「わぁ。素敵!」


 日ごろ大人しいメイムちゃんがペガサスを見た途端、感嘆の声をあげる。


メイムちゃんはロマンチストなのかな。


「空を飛べる召喚獣に乗って、上空から探すのさ。これなら遠くまで見渡せる」

「シュンさん、すごぉい!」


 アリサちゃんが大声ではしゃいだ。僕はその反応が見たかったんだ。


「でも、おにーさん。一人しか乗れないよ」

「確かにそうだね。なお、ペガサスに乗れるのは召喚士の僕以外では純潔の乙女だけだよ。みんなは問題ないと思うけどね」


ユキちゃんとメイムちゃんが顔を真っ赤にしていた。アリサちゃんは気にせず大はしゃぎ。シーナちゃんは何それ?という顔をしていた。


「ペガサスに乗る子は、この手綱をペガサスにかけてね。あとは……。召喚!グリフォン!」


 僕は召喚獣をもう一体召喚した。


「わわわ、おにーさん。魔獣を召喚した! これグリフォンだ!」

「グリフォンだなんて……。ドラゴン召喚も驚きましたが、グリフォンも神話で語り継がれる魔獣の一種。そのような魔獣も召喚できるのですね」

「全員に一体ずつ召喚してくれるの!?」


 全員に召喚獣をあてがうことはできない。召喚魔法のことについて、理解してもらわないといけないみたいだ。


 僕は能力石板を皆に見せて、解説した。


レベル1 狼(コスト1)召喚、召喚生物回復

レベル2 召喚コスト1増加、合計2

レベル3 召喚生物強化

レベル4 召喚コスト1増加、合計3

レベル5 闇の眷属ドッペルゲンガー(コスト2)

レベル6 召喚コスト1増加、合計4

レベル7 召喚生物瞬時回復

レベル8 召喚コスト1増加、合計5

レベル9 召喚生物大強化

レベル10 光の精霊ウィル・オ・ウィスプ(コスト3)

レベル11 召喚コスト1増加、合計6

レベル12 召喚生物複数強化

レベル13 召喚コスト1増加、合計7

レベル14 召喚生物複数回復

レベル15 火の精霊サラマンダー(コスト4)

レベル16 水の精霊ウンディーネ(コスト4)

レベル17 土の精霊ノーム(コスト4)

レベル18 風の精霊シルフ(コスト4)

レベル19 召喚コスト1増加、合計8

レベル20 ペガサス(コスト5)

レベル21 召喚魔法強化(全ての召喚魔法が強化される)

レベル22 召喚コスト1増加、合計9

レベル23 召喚生物複数瞬時回復

レベル24 召喚コスト1増加、合計10

レベル25 グリフォン(コスト6)

レベル26 召喚コスト1増加、合計11

レベル27 ????

レベル28 召喚コスト1増加、合計12

レベル29 ????

レベル30 ドラゴン(コスト10)

レベル31 召喚コスト1増加、合計13

レベル32 ????

レベル33 召喚コスト1増加、合計14

レベル34 ケルベロス(コスト12)

レベル35 ????

レベル36 ????

レベル37 ????

レベル38 ????

レベル39 召喚コスト1増加、合計15

レベル40 ????


 召喚魔法はコスト制だ。強力な召喚獣ほどコスト消費が大きい。


レベル40というほぼこの世界トップの召喚士の僕でさえコスト15しかない。


レベル30のドラゴン以上は実質一体しか召喚できない。


 でも組み合わせてなら召喚できる。


レベル30ドラゴン(コスト10)とレベル20ペガサス(コスト5)という具合に。


 だから、現在コスト5のペガサスとコスト6のグリフォンを召喚したから、コスト4の召喚獣までならまだ召喚できる余裕があるというわけだ。


「こういうことなんだ。無制限にいくらでも召喚できるわけじゃない。ただ、ペガサスに一人と、グリフォンに四人乗れるはずだから全員乗れるよ!」

「ほぇ~。召喚士ってすごいんだぁ」


 シーナちゃんが呆けた顔をして能力石板を見ていた。


「手綱五人分あるから、それをつけて、ペガサスとグリフォンに乗ろう。槍使いのシーナちゃんがペガサスがいいかな。他の子たちは僕と一緒にグリフォンの背に乗り移ろう」


 皆一斉に「はい!」と答えた。ペガサスはどうみても一人乗りだけど、グリフォンは巨体だ。僕たち四人ぐらいなら背中に乗せることができる。


「みんな、乗ったね? それじゃ空の冒険にしゅっぱーつ!」


 僕たちを乗せたペガサスとグリフォンが大きな翼を羽ばたかせる。すると、だんだんと宙に浮いてくる。


「うわ。うわ! 浮いてる! おにーさん、浮いてるー!?」


 シーナちゃんがペガサスの首もとに腕を回す形で抱き着いていた。


「しっかり手綱をもって! 大丈夫、手綱をしっかり持って入れば落ちないよ!」

「ふぇ~ん。おにーさんと一緒が良かったぁ……」


 シーナちゃんが弱気になっていたが、僕にはどうすることもできない。


一応、騎乗スキルもあるヴァルキリー職のシーナちゃんは本来馬に乗ることが得意なはずだ。


すぐに感覚を掴めるだろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る