薬草探し2

 背中に激痛が走る。しかし、倒れるわけにはいかなかった。まだ、大蜂が残っている!


「オルトロス! 今針を飛ばしてきた方向に猛火炎!」


 オルトロスが火炎を吐く。森の深くに居た何かが燃える。


「BUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUN」


 森の奥深くから姿を現したのは、数百匹の大蜂よりも更に大きい、女王蜂だった。僕に飛ばした針はもうすでに再生しているようで、尻尾の先で大きな針がぎらついていた。


「女王蜂か。ぐっ……」

「シュンさん!」


 アリサちゃんが僕の容態を気にかけてくれている。あの蜂の針には毒も仕込まれていたみたいだ。どんどん状態が悪くなっているのがわかる。


「シュン! あいつオルトロスの火炎に耐えているみたいよ。どうするの!」


 オルトロスはレベル32。その火炎に耐えるのか。鑑定眼スキルで見ると、あの女王蜂のレベルは28。なかなかの強敵のようだ。


 女王蜂が奇怪な音をあげて燃えながら迫ってくる。


「オルトロス、あの女王蜂を倒すんだ! 強化!」


 僕はオルトロスに強化魔法をかけて、迎え撃つように命令した。


オルトロスはぐっと地面を踏みしめ、女王蜂に飛び掛かった。


オルトロスの爪が女王蜂の腹を切り裂き、二つの口が胴体を食いちぎった。


 女王蜂は地に落ち、燃え尽きた。


「やった! 今度こそ完全に倒せましたね! シュンさん!」

「うん。良かった……」


 毒が体に回り始め、僕はがくりと膝をついた。


「シュンさん!!」

「大丈夫。アリサちゃんは薬草を集めて」


 僕の事は気にせずに、薬草を集めて帰ろう、そう伝えたかったけど。

僕は毒が体に回り、意識が遠のいた。



 ぼんやりとした意識の中、何かが口に触れた気がした。


喉に何か流れ込んでくる。僕はそれを飲み込んだ。


体が熱く、だるくなっていたのが薄れてきて、だんだんと楽になってきた。


 僕は意識がはっきりしてきて、目が醒めた。


「毒で意識を失うなんて、なんてざまだ」

「本当よ!ソロの時なら死んでたじゃない。まあ、わたしが居るから大丈夫だけど。今回はアリサに礼を言いな! あの薬草を飲ませて助けてくれたんだから」


 僕の頭に柔らかい何かが当たっている。目を開けるとアリサちゃんが僕の顔を覗き込んでいた。


ああ、そうか。膝枕してくれてたのか。


「シュンさん、治りましたか? 急いで薬草を煎じて飲ませたんです」

「うん。大丈夫、もうすっかり回復したよ、ありがとう」


 アリサちゃんが薬を煎じて飲ませてくれたのか。一人で大変だったろうに。


「シーナがシュンさんのことを「おにーさん」と呼んでいますけど、わたしはシュンさんのこと本物のお兄さんと思っています。エルフは本来、人里には滅多に姿を現さない種族で、王都にもほとんど居ません。だから、学校の中では避けられてたんです。同じような境遇だったシーナ、ユキ、メイムの三人だけがわたしと仲良くしてくれたんです。それからは、わたしは無理にでも元気に過ごそうとして、いつも元気いっぱいのフリをしていました」

「そうだったんだ……」


 はい……。と言った後、アリサちゃんは口を噤んだ。


緑豊かな森の中だけど、僕らがいるところの周辺は焼野原だ。


薬草は全て無事だった。大蜂との激戦だったが、やはり護りながらだとソロの時より厳しいんだな。もう少し全員のレベルアップが必要だ。


「アリサちゃん、もう僕は大丈夫だから。そろそろ帰ろう。ユキちゃんの容態も気になるし」

「そうですね! 薬草はいっぱい集めておいたから、ほら。帰りましょう!」


 元通りの元気いっぱいなアリサちゃんに戻っていた。僕たちはグリフォンを召喚して、再び空から王都へと帰ったんだ。

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