一騎当千

「なん…だと…」


森林まで、ギネという村まではあと一歩というところで、出くわしてしまった。


いや、僕たちにまっすぐ向かっていることから、僕たちを探していたのかもしれない。


「こんなこと、あるのか。何故気付かれているんだ」


最初からおかしいと思っていたが、やはりバレていたのか。


この状況でアイ=レンからフル=フランに渡航するなんて、バレないわけがない。


ざっと見て兵士は1000人は居る。


「キトラさん、アリサちゃんたちを頼みます。ここは僕が引き受けます!」


僕は、キトラさんやアリサちゃんたちを下がらせ、兵士の前に単身出た。


僕が前に出ると、奴らは槍を構え、弓を放ってきた。


「……召喚!デビルニア!」


召喚陣の中から、蜘蛛の下半身と女性の上半身を持ち、鎌のような武器を持つ、死の使いデビルニアを召喚した。


デビルニアは放たれた矢をその大きい鎌で全て払い落とした。


「いけ!デビルニア! フル=フランの兵士を屠れ」


デビルニアの身長は約5メートル。その大きなサイズと同サイズの鎌を持つ。


鎌の一振りで数十人が真っ二つにされた。


兵士たちは隊列を組み、デビルニアに迫る。しかし、目の前に立ちふさがる兵士は全て大鎌で薙ぎ払う。


「これは……。召喚士とはこれほどの力を持つのか・・・・・・」


キトラさんが驚愕に眼を見開いている。


あまりにも強大なデビルニアに対し、兵士たちは恐れ慄いた。


「これは、一時撤退だ! ひけー! ひけー!」


兵士たちはついには撤退し始めた。僕はデビルニアに追撃を命じた。


「デビルニア! 一人も逃がすな。僕たちの事を報告されたら困る」


デビルニアは跳躍し、兵士が後退するその前に現れ、また鎌を振るった。


「シュンさん……。あの人たちは人間ですよ? いいんですか?」

「わかってる。召喚獣にさせているとはいえ、人間を殺すのは初めてだ。しかし、こうなっては仕方ない。殺さねば、アイ=レンが侵略されてしまう」


荒野は兵士たちにとって阿鼻叫喚の場となった。


デビルニアが奮う大鎌は確実に兵士の数を減らしていた。


残り一人となったフル=フランの兵士。


「いやだ、助けてくれ!いやだー!シニタクナイ!」


デビルニアが最後の一振りで、兵士の身体が真っ二つにされる。


1000人居た兵士はデビルニアによって、一人残らず始末された。


「デビルニア、送還!」


僕はデビルニアを送還し、キトラさんやアリサちゃんたちの元へ戻った。


「よくやった、と言うべきかな。召喚士の力がここまでとは思わなかった。君は間違いなくSランク冒険者だ。Sランクパーティーの冒険者にも決して引けをとらない」


Sランクパーティーの冒険者は一人で千人の兵士に匹敵すると言われている。僕はまさしくそうなったのだ。


「全員始末したから、とりあえず、私達がここで撃退したことは誰にも伝わらないだろう。私達の情報がどこまで伝わっているのかわからないが、首都パルドンに向かうことには変わりない」


僕たちは再び走り出した。アリサちゃんたちは変わらずついてきてくれている。


「おにーさん、大丈夫?」


シーナちゃんが僕の様子の些細な変化を感じ取って。抱き着いてきた。


「大丈夫、ありがとう、シーナちゃん」


僕はシーナちゃんの頭を撫でてあげた。そして、すぐにまた走り出した。


兵士の大量の死体はもう遥か後方だ。


このまま、森林に入り野営するのか、それとも村に入るのか。


「キトラさん、村に入りますか?」

「いや、このあたりの村はまずい。街道を進むと休憩所があるはずだ。そこで商人の馬車を買い取ろう」


僕たちは街道に戻り、休憩所を見つけ次第、休むことにした。

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