馬車の調達

休憩所は旅商人たちが旅の途中で立ち寄り休息をとれるようにしたものだ。管理は各国の商人ギルドが行っているが、商人ギルドは国を超えて繋がりがあるため、他国の商人ギルドのものが管理している場合もある。


僕はアイ=レン国で商人のレベルも上げていたため、商人ギルドについてもある程度は知識があった。


キトラさんが村を選ばず、休憩所を選ぶのも納得がいった。商人ギルドは純粋に金の目算で動くため、軍関係や政治関係では動かない。商人たちの利己主義が今の僕たちの状況には好都合だった。


街道に戻って少しすると、休憩所の看板が見えてきた。今はもう日の出がすぎ、朝になっていた。


「あの休憩所で休息をとるぞ」


キトラさんが先に休憩所へと走る。


僕たちはとりあえず休憩所から少し離れたところで待っていた。


キトラさんからOKの合図が出てから休憩所の中に入った。


休憩所の中は、食べ物や飲み物、簡易トイレ、仮眠所などが用意されていて快適だった。


「ふ~、夜通し走りっぱなしだったから、もう足が動かないよ~」


アリサちゃんが休憩所のソファに座り込み、足を伸ばしていた。その横にはユキちゃんとメイムちゃんが座っていて、シーナちゃんはアリサちゃんと重なるように上にのっかっていた。


「アリサちゃんたちは相変わらず仲良しだね」


キトラさんは僕たちと同じように休んでいた商人に声をかけ、馬車を融通してもらえないか聞いていた。


何人かに声をかけた後、馬車を売ってくれる商人が見つかったようだ。


「シュン殿。馬車が手に入った。すぐに出発しよう。御者は私がやる」


商人に馬車代を払ったキトラさんは、休憩所の外に出て馬車の元へと向かった。


ソファで寛いでいたアリサちゃんたちに声をかけ、僕はキトラさんの後を追う。


「みんな、ついてきてる? 馬車の中で休めるから、ほら、早く乗ろう」


僕はまずアリサちゃんたちから奥に乗ってもらい、最後に僕が乗った。


キトラさんは御者台に乗って、馬の手綱を持った。


「それでは、出発だ!」


馬の手綱を引き馬車を出発させる。


休憩所に居た時間はわずかだ。追手が居たとしてももう追いつけないだろう。


港町ルーからは随分遠い。


御者台のキトラさんに話しかけたが、あの1000人の兵はあらかじめ港町ルーに駐屯する予定だったのだろうとのことだ。


指揮をとる隊長も居なかった事から、元々合流するだけの予定だった兵に早馬を飛ばして、僕たちを捕えようとしたのだ、と推測を立てた。


「私達は目立ちすぎる。馬車の中にフル=フランの商人の服が入っているから、全員着替えてくれ」


僕は馬車の中にあった荷物の中に商人服があるのを見つけた。男女の差はなくゆったりとした服だ。


アリサちゃんたちも馬車の中で着替え始めた。


僕は思わず外の方を向いた。


奔放なのは構わないが、節度を持って接していないと。


せっかくのパーティー。男女問題で解散になったら大変だ。


四人ともすぐに着替えた。これでもう僕たちは商人にしか見えないはずだ。


「アリサ、よく似合ってるね」

「ユキもよく似合ってるよ!」


ユキちゃんがアリサちゃんを褒めてアリサちゃんも褒めた。この四人の関係は、僕から見たところ、アリサちゃんとシーナちゃん、ユキちゃんとメイムちゃんという感じだったけど、やっぱり四人とも仲良しなのだな、と思った。


ユキちゃんとメイムちゃんが同郷だと言うことは、港町ルーの宿屋で初めて知った。


僕はまだまだパーティーメンバーについて知らないことだらけだ。今回のこの任務を通してもっと仲を深められたら良いと思う。

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