洞窟探索でやり返し
「新手か!?」
「け、ケルベロスだって……!」
「そんな、もう終わりよ……」
「神様……」
Sランクパーティーはケルベロスを敵だと思っているらしい。なら、僕が出ていくしかないな。
「ケルベロスよ! そのアンデッドたちを焼き尽くし、凍らせ、全て感電させ黒焦げにしてしまえ!」
僕はケルベロスに更に命令を出す。
「ぐぅるるるるるぅあああああああああああああああああああ」
三つの頭からそれぞれ火炎、吹雪、雷撃が放射された。
次々と壊されていくスケルトン・ソルジャー。
レイスも燃やされ、凍らされ、雷撃で蒸発させられていた。
リッチは詠唱に入る前に大きな牙で黒いローブごと体を引き裂かれ、燃やされた。
「ケルベロスを操るとは、おぬし何者じゃ! ぐうううう。ねくろ……」
ネクロマンサーが詠唱する前に、僕のスペシャルクラス、召喚騎士専用スキル:召喚剣がネクロマンサーを切り裂く。
「なんだと……! 召喚騎士……。おぬし、この世界にたった一人しか、いな、い」
二本の召喚剣に切り裂かれたネクロマンサーは息絶えた。僕は召喚剣を解除し、周囲の様子を見る。
ボロボロで倒れそうなSランクパーティーの横で勇敢にアンデッドたちに立ち向かっている僕のパーティーメンバー。
レベル5ばかりだけど、アンデッド相手なら余裕だろう。
ケルベロスが取りこぼしたモンスターは全てアリサちゃんたちの手で倒された。
「やったぁ! 全部うちらがやっつけたぁ!」
「やったね! シーナちゃん!」
シーナちゃんとアリサちゃんが手をとりあって、喜んでいる。
ユキちゃんとメイムちゃんは汗をぬぐって一休みしていた。
「Sランクのパーティーの皆さん。僕はこの新しいパーティーと共に第二の人生を歩んでいく。もう僕に干渉するな、イドリオ」
「くっ……。つけあがるなよ! この役立たずが!」
イドリオが吠える。が、僕には負け犬の遠吠えにしか聞こえない。
「それと、そちらのおじさんはやっぱりただの商売人だったみたいだけど、かの有名なSランクパーティーに本当に必要なのか? 甚だ疑問だな」
大商人レベル40のでっぷり太った男は、先ほどまで隅で縮こまっていたのに、今は胸を張って威張るような態度だった。
「わしは確かに商人だ。お前たちが戦闘の腕が立つということはわかった。しかし、わしの本当の戦場は商売上だ。お前たちがどれほど強くなろうと、金の力には勝てん。つまりは、そういうことじゃ」
せっかくの勝利の余韻に浸っていたのに台無しだ。確かに僕たちは大金持ちではない。しかし、『シュン』の家は貴族だったはず。一度実家に帰ってみるのも良いかもしれない。
「おにーさん、あいつだいっきらい!」
シーナちゃんがあかんべーを商人の男にしていた。
「Sランクパーティーの奴らはもう相手にしないでおこう。それより、リアン・ランベスお嬢さんの白狼を探さないと……、ってあれ! あそこにいる!」
ネクロマンサーを倒した後ろに大きな白狼が倒れていた。僕たちは慌てて白狼のもとへ駆け寄った。
聖女のメイムちゃんが白狼の具合をみるため、体に手をあてた。
「脈もありますし、息もしています。おそらく、回復魔法で回復するでしょう」
「ほっ。良かった。メイム、なら早く回復魔法を頼みます」
ユキちゃんがメイムちゃんに回復魔法を使うように促す。
メイムちゃんは白狼の大きな体に両手をあて、ヒールの魔法をかける。
しばらくヒールの魔法をかけ続けていると、白狼が目を開けた。
「きゃっ!!」
目覚めた途端、飛び上がり唸り声をあげた。
「がるるるるるるるる」
みんな一瞬のことで何が起きたのか把握できないまま、白狼がメイムちゃんに咬みつこうとした。
「あぶない!」
僕はメイムちゃんを庇うように手を伸ばし、白狼は僕の左腕に咬みついた。
「うっ……」
腕から血が滴り落ちる。僕は右腕でズボンのポケットに入れていた犬笛を取り出して、吹く。
「ご主人様がお待ちだとよ、白狼!」
ピィィィィーーーー、と高周波の音が洞窟内に響き渡る。すると、白狼は急に僕の腕を咬む力を弱めて、腕から口を離した。
「よしよし、そうだ。これはリアン・ランベスのお嬢さんがお前を躾けるための犬笛だからよくわかるよな」
白狼は急に大人しくなり、僕の方へすり寄ってきた。それを見たメイムちゃんは僕の腕を取り、沈痛な面持ちで回復魔法を詠唱した。
「シュンさん、私を庇うために……」
メイムちゃんが涙を流すとより色っぽく見えた。白狼に咬まれた傷は深く、牙が刺さっていたところは骨が見えていた。
アリサちゃんとシーナちゃん、ユキちゃんも僕の腕の様子を見に来る。Sランクパーティーの奴らは助けてもらった礼も言わず、いつの間にか居なくなっていた。
「回復魔法で応急処置は済みました。もう私の魔力が残っていません。シュンさんには申し訳ありませんが、今できるところはここまでです。シーナも先ほどのアンデッドとの戦いで魔力が枯渇したようです」
「うん。大丈夫。白狼も見つかったし、長居は無用だ。今高レベルのモンスターと出くわすと全滅しかねない。早く洞窟を出よう!」
僕は四人に号令を出し、迅速に洞窟を脱出しようと入り口に向かって走り出した。犬笛を使うと、白狼も僕の後ろについてきてくれた。
洞窟を出てからは、またグリフォンとペガサスを召喚し、手綱をアリサちゃんに任せ、街へと戻った。
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