装甲ムカデ退治

――炭鉱跡 奥


 グールの灰を踏みしめて、さらに奥までやってきた。


 先にグールをやっつけておいたから、随分楽な道のりだ。分岐点などもなく、順調に進めている。しばらく進んでいると、すごく広い場所へたどり着いた。


 僕の勘からすると、ここは何かいる。


「ここは……。シュンさん」


 ユキちゃんも気付いたようだ。ニンジャのアリサちゃんも構えをとっていた。さすがにニンジャとサムライだけあって、気配に敏感のようだ。


ごごごごごごご……。


 ものすごい地鳴りがなった。地面が上下に動いている。地震か!?


「ああ、何かでてくる!」


 アリサちゃんが指差した方を見ると、地面が盛り上がっていた。


 そして、それは顔を現した。


 大ムカデ? それにしては、顔から身体まで装甲のようなものに覆われている。あれは、随分硬そうだ。


「あれは、装甲ムカデですね。そのままですけど。これならあたしも大丈夫です。皆さん、支援魔法をかけますね」


 聖女のメイムちゃんが祈るようなポーズをとり詠唱すると、パーティー全員に筋力強化、身体強化の魔法がかかる。


 攻撃力、防御力、敏捷性全てがアップするレアな魔法だ。聖女のユニークスキルだろう。


「いっくよ~! 手裏剣!」


 ニンジャのアリサちゃんが手裏剣の術を使った。本物の手裏剣ではなく、魔力で生み出した光の手裏剣だ。


 装甲ムカデの身体にその光の手裏剣が刺さったが、あまりにも範囲が小さすぎて、ほとんどダメージを与えられていない。


 レベル3ではこの装甲ムカデは倒せないのかもしれない。


「みんな、ちょっとまって! 鑑定士のスキル『鑑定眼』でモンスターのレベルを見てみる」


 僕は鑑定士のスキル『鑑定眼』を使った。


 この世界では、転職して違うクラスになっても、以前覚えたスキルは全て使用ができる。


 しかし、転職した分、レベルの低いスキルになってしまうため、基本的には一つの道を極めた方が強力なスキルを使えるようになるのだ。


 なお、レベル20以上は、努力だけではレベルが上がらない。そのクラスの才能がないとレベルが上がらないのだ。


 だから、僕は召喚士以外はレベル20止まりなのだ。これ以上は何があってもレベルが上がらなかった。


 『鑑定眼』スキルを使用したところ、装甲ムカデはレベル20らしい。


 ベテラン冒険者じゃないと歯が立たないレベルだ。


 王都近郊にこんなレベルのモンスターがいるなんて……。


 これじゃ、この子たち攻撃を受けた瞬間、死んじゃうかも。


「みんな! その装甲ムカデはレベル20だ! 全員僕とウィル・オ・ウィスプの後ろに来て! 攻撃を受けちゃダメだ!」


 前に出ていたアリサちゃんの後退が間に合わない。僕は装甲ムカデの攻撃をアリサちゃんを庇うように抱え込んで代わりに受けた。


 僕のレベルは40。召喚士といえども、防御力は相当なもんだ。


「ぐっ……」

「あ、シュンさん……!」


 アリサちゃんが僕ごと吹っ飛ばされたけど、僕が抱え込んで庇ったから無傷だった。アリサちゃんは庇った僕を気遣ってか、涙ぐんでいた。


「大丈夫、この程度の傷なら全然平気。それよりも、随分調子にのってくれてるな、あのムカデ」


 僕は腰に提げていた杖で地面に召喚陣を素早く描く。


 レベルの高い召喚モンスターは召喚陣を描く必要があるのだ。


 ウィル・オ・ウィスプだけで充分かと思ってたけど、予想外のモンスターだったから、新たに召喚する必要がでてきた。


「いでよ、『ドラゴン』! あのムカデを屠ってくれ!」

「「「「!!!!」」」」


 パーティー内の四人ともが驚愕した。


 召喚陣の中から出て来たのは、恐ろしい牙と爪、大きな翼に大きな体躯をもったおそらく生物としては最上級の存在『ドラゴン』。


 人間よりも高度な知能を備え、前に立つ者全てを口から吐く火炎で焼きつくす至高の存在。


 僕の方に向かってきていた装甲ムカデはその顔をドラゴンに掴まれ、そして投げつけられた。


 ドラゴンは翼を広げ、飛び上がり、装甲ムカデにのしかかった。さらに、飛び上がり、口に炎を溜め、一気に放射した。


 装甲ムカデの硬い装甲を融かすほどの劫火。焼きムカデどころか、あまりにも高熱のため、どんどん溶けていってしまった。


 装甲ムカデを全て融解してしまった跡には、地面が溶岩をたれながしたように紅く光っていた。


 僕は装甲ムカデを完全に倒したのを見計らって、ドラゴンを送還した。


 召喚魔法は、モンスターを召喚している間、ずっと召喚士の魔力を消耗し続けるため、用が終われば送還しておかないと僕が干からびてしまう。


「おにーさん! すごい!」

「シュンさん、見事です。敬服いたしました」

「あたしも凄いと思います……。お弁当食べましょうか」


 皆、それぞれの思いを口にした。ニンジャのアリサちゃんだけ、気分が高ぶったまま、ふんふんと鼻を鳴らしていた。


「みんな、さっきのムカデはかなりの高レベルモンスターだったから、またレベルが上がっているかもね」


 みんなの能力石板をみると、レベル5になっていた。


 レベル5までは比較的上がるのが早い。それにこの子たちの今のクラスは適正クラスだから、おそらくかなりのレベルまで上がるだろう、と僕の勘が言っている。


「やったぁ! 一日でレベル5になれるなんて、わたしたちすごい!」


 アリサちゃんがぴょんぴょん跳ねて喜んでる。メイムちゃんの手をとり二人で喜びを体全体で表現していた。ユキちゃんはその様子を微笑ましく眺めていた。シーナちゃんは能力石板を食い入るように覗き込んでいた。


「スキルが増えてる……」


 能力石板を食い入るように見ていたシーナちゃんがぼそっと呟いてた。


 一気にレベル5だからね、合計で4つ新たなスキルを覚えたはず。ちなみに、昔僕が入手したクラス別修得スキルリストによると、


ニンジャ:忍術と忍び刀、苦無、手裏剣を扱う

レベル1 火遁の術(火を操る術を行使する)

レベル2 水遁の術(水を操る術を行使する)

レベル3 土遁の術(土を操る術を行使する)

レベル4 木遁の術(木を操る術を行使する)

レベル5 雷遁の術(雷を操る術を行使する)


サムライ:刀剣術と破壊魔法を扱う

レベル1 火炎球(ファイアボールの魔法:火の玉を放出する)

レベル2 居合切り(武器に気を込め、一瞬で敵を斬る)

レベル3 火炎剣(武器に炎を宿し、敵を攻撃する、霊体にも効果あり)

レベル4 炎の渦(炎が渦になって放出される)

レベル5 剣閃(刀剣の軌跡が刃となって敵を襲う)


神女(ヴァルキリー):槍術と回復魔法を扱う

レベル1:浄化(アンデッドを浄化し、消滅させる)

レベル2:ヒール(魔力で傷を治癒する)

レベル3:祈り(神聖なる力を武器に付与する、霊体に対し物理攻撃が可能になる)

レベル4:ヒールプラス(魔力で傷を瞬時に治癒する)

レベル5:魔法障壁(魔力で防御障壁を展開する)


聖女:霊体やアンデッドを浄化できる。回復魔法を扱う。ユニーククラス。

レベル1:浄化、ヒール、聖女の祈り(エクストラスキル:パーティーの能力を強化する)

レベル2:祈り、ヒールプラス

レベル3:状態異常回復(状態異常を回復する)

レベル4:魔法障壁、ヒーリング(パーティー全員を治癒する)

レベル5:ヒーリングプラス(パーティー全員を瞬時に治癒する)


このようになっていた。レベル5までで、そのクラスの基本的なスキルは修得が完了する感じだな。

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