大成功の予感
――王都ロンド 冒険者ギルド
冒険者ギルドの受付のお姉さんに意気揚々とクエスト討伐の報告を入れる。戦利品のケイブ・アリゲーターの心臓二つを渡して討伐の証を証明する。
「わわ、ケイブ・アリゲーター二体の討伐なんてSランクパーティーの方々でも厳しいのに、すごいですね! これ報酬です。また、王宮からシュンさんたちに勲章を送りたいと連絡がありました。明朝、パーティー全員で王宮に行ってくれませんか? 炭鉱跡の装甲ムカデ討伐とスコーフェル洞窟のネクロマンサー討伐、そして、今回のケイブ・アリゲーター討伐で一気に王宮内で噂になったみたいですよ!」
僕とシーナちゃんは顔を見合わせてお互いの手を合わせて喜び合った。
「やった!やった! うちらの活躍が王宮で認められた!」
「うんうん。王宮からパーティーランクが格上げされるかも! シーナちゃんもレベル15になったし、全員がレベル15以上になったら晴れてノーランクからDランクパーティーになれるよ1」
この世界では活躍した冒険者パーティーは冒険者ギルドと王宮に認められることによってパーティーランクが上がっていく。
パーティーランクが上がると、様々な恩恵がある。王宮公認の店を利用できたり、特別なクエストを受けれたり、定期報酬がもらえたりする。
ノーランクのままでは何もない、ただの冒険者だけど、ランク有パーティーになると、それだけで特典があるのだ。
「僕たちの店も順調だし、生活の基盤はできたね。シーナちゃんたちも、もう胸をはって王都で暮らせるようになるよ。学生でもないし、免除されてる立場でもなくなる」
「うん。おにーさんのおかげだね! うち、寮に戻ってアリサたちに知らせてくるね! また明日!」
シーナちゃんがアカデミーストリートの方へ走り去っていくのを僕は姿が見えなくなるまで見送った。
「さ、シュン。帰るわよ」
「わかってるよ、リエ。帰る前に事務所によって報告を受けないと。今の僕は単なる冒険者でなく、経営者なんだから」
僕は冒険者ギルドから出て、事務所へ戻ることにした。シーナちゃんがクエスト報酬を掏られてからは、クエスト報酬は僕預かりになっている。
僕がパーティー全員分を管理し、必要な時に彼女たちにお金を渡すのだ。幸い、僕のアパートは僕の実家スローン公縁の者が管理してくれているので、安全だ。
――王都ロンド シュンの事務所
「ジャスタスさん、今日の稼ぎはどうでした?」
「お、これはシュン殿。今日も日の売り上げを更新しましたよ。これならまだまだ大きくできますね。まだ大丈夫ですが、そのうち倉庫をもっと大きいところに移さないといけなくなりますね」
ジャスタスさんが帳簿を見せてくれた。目まぐるしく業績が伸びていた。僕たちが冒険者としても活躍しているから相乗効果で伸びているのだろう。
「あ、シュンさん、お疲れ様です! 冒険での活躍聞いています。さすが僕が目を付けた方ですね」
『天才』パトリックくんだ。ジャスタスさんから聞いた話では、ものすごく優秀で手作業も早いらしい。
「パトリックくんか。優秀だそうだね、さすが『天才』。そういえば、もうすぐ戦争が始まりそうだけど、パトリックくんはどうするんだ?確か国家戦略戦術専攻だったよね。義勇兵志願するの?」
「今の僕ではとても軍に貢献することはできません。今回は見送ってここのバイトしてますよ」
13歳の若き天才は謙虚だった。確かに一兵卒として参加しても役には立たないよな。僕たち冒険者なら一兵卒でも良いだろうけど。
現在の国家情勢は軍事大国フル=フランが攻め込んでくると言われている段階だ。王宮内部ならもっと詳しい情報が入っているんだろうけど、巷に流れている情報はそんなところだ。
ただの一兵卒で参加するとしても、もっと情報を仕入れておく必要があるな。
「そろそろ実家を頼れば? 確かに『本当』の実家ではないかもしれないけど、この国の重鎮であることは確かよ。戦争に関する情報も持っていると思うわよ」
「わかってるよ、リエ。そろそろ腹を決めて会いにいかないとな。しばらく会っていないようだから、家族の事を忘れていても仕方ないよな」
「向こうはシュンの事をよく知っているけれど、平吾、あんたはほとんど知らないもんね。ま、大丈夫よ。向こうもシュンの本音を知っていたわけじゃないから」
確かに自殺するほど悩んでいた事すら気付いていないような家族だからな……。
明日、王宮にパーティー全員で行った後、スローン公爵の館に行ってみるか。
僕、いや、俺は明日の事をあれこれと考えながら、眠りについた。
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