Sランクパーティーを追放された器用貧乏に転生して二度目の人生をやり直す!

清彼方

転生してやり直し

 俺は竹中平吾。38歳、しがないサラリーマンだ。


 昔から堪え性が足りなくて、仕事で嫌な事があるたびに退職しては転職を繰り返していた。


 そのせいで、仕事のスキルは全て中途半端。何一つ誇りに思えるものはなかった。


 今日も自分より若い上司に叱られる始末。俺の人生、こんなことばかりで良いことなんて一つもないと思っていた。


 ある日、通勤電車の中であの女の人いいなと見ていたら電車を降りた後、声をかけられた。


 その女子から、前々から通勤電車の中で見かけて声をかけたかった、と言われた。俺は、その女子と通勤電車から降りた後、会社に行くまでの道中だけだが、彼女と話ながら行った。

 

 俺の会社の前まで行くと、「私はこちらなので」と言って彼女は行ってしまった。俺は会社を休んで彼女と話し続けようかと思った。だが、チキンな俺は普通に出勤した。しかし、俺の心の中は小躍りしていた。ようやく俺にも春がやってきたのだ、と。


 相変わらず仕事では自分より若い上司や同僚たちに虐められる始末だったが、そんな些細な事はもうどうでも良い。俺が気に入ってたあの女子が俺と話したがっていたのは事実なのだから。


 仕事を終え、帰路についた。定時ダッシュだ!


同僚たちに嫌味を言われたが、そんなの関係ねぇ!


 会社を出て、駅へと向かった。その途中、なんと今朝の女の子が信号待ちをしているところにでくわしたのだ。


 おお、神よ。これは運命か。


彼女も俺を見つけたらしく、こちらへ走ってこようとした。すごいエンジン音が聞こえる。


「危ない!」


 俺は咄嗟に動いていた。


 暴走車が急に曲がってきて、横断歩道にいる彼女の方へ向かってきたのだ。


 俺は全力ダッシュして、彼女を突き飛ばした。相当な力で突き飛ばしたから、怪我をしたかもしれない。


 その後、彼女がどうなったかを確認することはできなかった。自分の人生の最後に、好きな女性を助けることができて、良かった。そう思ったところで、意識が途絶えた。


――死者の間


「あなたは死にました。一度だけチャンスを与えます。貴方の魂を異世界に転送します。その異世界には貴方と同じように転職を繰り返し、役立たずとなり仲間のお荷物になりました。そして、世界トップのSランクパーティーを追放された者が居ました。その者は追放された事実を受け入れられず自殺をしました。その者は貴方と違い、他人の命を救わなかった。だから、貴方をその者へと転生させます。貴方がその者に代わり人生をバラ色へと塗り替えるのです。貴方の後悔を、異世界でやり直しましょう。どうか、貴方にご加護がありますように」


 頭の中に声が響いた。


 俺はどうやら異世界に転生されるようだ。そこでは俺のように世界や自分の仲間から見放された奴になってしまうらしい。同じような人生だが、俺が人生一からやり直せるなら、今度こそは必死に頑張るさ。


 あの女の子のように、俺を見初めてくれる存在はいるんだ。


だから。 


――もう逃げはしない。

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