ワンちゃん探し
――冒険者ギルド
冒険者ギルドの受付は、可愛いお姉さん。年齢はおそらく20代前半だろう。
清楚な感じで笑顔が癒しだ。Sランクパーティーには愛想が良く、召喚士なりたての頃の僕には愛想が悪かったように思えた。
まぁ、誰だって良い大人なのにレベル1だとそうなる。
「おっねえさ~~ん! 私たち自警団になる! 何かクエストない!?」
「アリサちゃんはいつも元気ね。自警団って町中のクエストを受けてくれるってことかな? それなら助かるわ。町中のクエストは報酬が悪いから冒険者さん方は受けてくれないから。いつもはギルドの職員が片付けてたりするのよ。クエスト自体はたくさんあるから、受けていって。はい、これリスト」
ギルドの受付のお姉さんはアリサちゃんに王都のクエストリストを渡した。僕はそれを覗きみた。
クエスト:飼っていたワンちゃんが居なくなってしまいました。探してくれる人募集。
依頼主:リアン=ランベス
「ワンちゃん捜し!!」
シーナちゃんが張り切っている。それじゃ、早速。依頼者のフェデルカさんとやらに会いに行ってみようか。依頼人の住所は、貴族街に住んでいるみたいだ。
「貴族街からの依頼みたいだね。じゃあ、早速行ってみるか」
「はい、頑張りましょう」
僕が号令をかけると、メイムちゃんが相槌を打ってくれた。ユキちゃんは黙って頷き、アリサちゃんとシーナちゃんはお互いに手を繋いで先を歩いていった。
――貴族街
王都ロンドには、
大きな広場のある様々な出店や材料、武器道具なんかの店があるメインストリートに、
教会や学校のあるアカデミーストリート、
『腰掛』と呼ばれる宿屋や駆け出し冒険者の住む家が多いスローンストリート、
貧しい民やならず共が多い裏通り、
上流市民が住む貴族街、
王の住む王宮と大きく分けて六つの区画がある。
僕は駆け出し冒険者だから、スローンストリートに、アリサちゃんたちは女学生だったから、アカデミーストリートに住んでいる。
駆け出しだから、学生だから、といってスローンストリートやアカデミーストリートに住まないといけないわけではなく、賃料や店などが揃っていてそのぐらいの身分のときはそこに住んでいる方が便利だから、自然と多くなるのだ。
実際、駆け出しの冒険者や学生が貴族街に住んでも高すぎる賃料や周りの貴族たちとの折り合いが悪くなって、出ていくのは目に見えてる。
何事も自分に向いている所の方がいいのだ。
今回のクエストの依頼者は貴族街に住んでいた。広い王都ロンドの中でも一部の上流市民しか住めない貴族街。
普段なら、あまり関わりになりたくない人たちだ。
フェアリーのリエから話を聞いているが、僕はもともとこの貴族街の生まれだ。両親ともに、貴族で兄が三人居る。
貴族とはいえ、四男だったから家督相続は出来ず、冒険者になったというわけさ。
今も毎月仕送りが送られてきている。
僕の家は充分に裕福なんだ。
「ねーねー。うちやメイム、アリサは人族じゃないし、ユキはもともと極東から流れ着いた民の一族だから貴族街の人たちと関わることって一度もなかったんだけど、一体どういう人たちなんだろうねー?」
シーナちゃんが突然そんな事を尋ねだした。やはり、そうか。アカデミーストリートの王国女子寮に入っていて、卒業してもまだ寮住まいだったから、もしや、と思ったけど。
この子たちは、どちらかというとこの国の中じゃ、貧しい家の出になるのだろう。
「そうだね、僕もあんまり知らないから、想像もつかないなぁ」
僕は、あはは、とぎこちなく笑ってごまかす。
『シュン』として生まれ変わる前でも貴族なんて想像もつかない、ただの一般庶民だった自分としては全くわからない。
今の『シュン』の家族の事はリエから聞いてある程度の情報はあるが、一般的な貴族の情報は全くなかった。
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