1年後からやり直し

――1年後


「なかなか様になってるね。これなら、もう役立たず呼ばわりはされないわ。召喚士レベル40。商人レベル20、鑑定士レベル20、狩人レベル20、盗賊レベル20。召喚士としては一人前にまで成長したし、他のクラスもここまで出来ればどこのパーティーでもやっていけるわね」


 フェアリーのリエが僕のことを褒めるようになった。


 Sランクパーティーを追放されてからの1年、僕は必死に自分を磨きに磨いてきた。


 召喚モンスターも狼どころじゃなくて、ドラゴンを召喚できるようになった。これで、あのSランクパーティーを見返してやれる。


 すっかり、転生先の『シュン』になりきってしまった俺だったが、これはこれで悪くない。


 現実世界で死んでしまった俺は、この世界で、自分のパーティーを追放され、誰にも相手されないと思い込み自殺してしまった『シュン』としてやっていくしかないのだ。


 二度目の人生ということもあり、今度は必死に自分を磨き、ようやく、1年前のSランクパーティーと同じレベルまでたどり着いた。


 Sランクパーティーも頑張っていたようだが、レベル40以降はなかなかレベルが上がらない。リエの情報によると、まだレベル40のままみたいだ。


 俺、いや、僕に関してはもともと『商人』と『鑑定士』のレベルが上がっていたから、ダンジョンから持ち帰ったアイテムを鑑定し、より高く売り、良いものを安く買っていたため、武器や防具、道具には困らなかった。


 それに、盗賊のレベルが上がっていたから、罠にもかからず、安全に宝箱を開けれたから見つけたアイテムは全部安全に持ち帰ることができたし、狩人のレベルが上がっていたから、遠くから弓と召喚モンスターで安全にいくらでも狩りが出来たし、ぐんぐん他の奴らより楽にレベル上げが可能だった。


 だから、わずか1年でSランクパーティーに追いつき、他のクラスのレベルも上がっていったんだ。


 召喚士のレベル30では、人を越える力と頭脳を持った『ドラゴン』を召喚できるようになる。

 

 召喚士は序盤から中盤こそ、支援職としてしか活躍できないが、レベルが上がるにつれ、より強力なモンスターを召喚できるようになり、レベル30を越えた先は、パーティーなしでも召喚モンスターだけで最難関ダンジョンに潜れるようになるほど強力になる大器晩成型のクラスなんだ。


 今思うと、僕の歩んできた道は間違いではなかったのだろう。人より成長が遅かっただけだ。確かに、もう21歳。この世界では皆、一桁歳の時から何かしらのクラスにつき、修練に明け暮れる。


 21歳ともなれば、その道では他の追随を許さず、後からでは到底追いつけないレベルに達している頃だ。そう考えると、20歳の時点で一つのクラスが最高でも10しかなかったような僕は完全にお荷物扱いなのにも納得がいった。

 

 しかし、そこで世を儚んで死んでしまっては意味がない。


 転生した俺、いや僕は寝食も忘れ必死に腕を磨き、ようやくSランクと同等のレベル40までになったんだ。


「なら、パーティーに加入すべく、再度冒険者ギルドに行ってみるか。この1年、一度もギルドにも実家にも寄らずにただひたすらにダンジョンに籠ってただけだからな」

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