魔法使いとして戦力外通知を受けたので鑑定屋を始めたら、呪いのアイテムばかり持ち込まれます

後藤紳

プロローグ


 遠い東の国では、永く使った道具には神様が宿るという。

 そんな事ではいつか国中が神様で溢れかえってしまうんじゃないかと思ってしまうが、なんでもその国には八百万もの神様がいるらしく、多分もう溢れかえっているに違いない。


 迷宮街と呼ばれるこの街にも、似たような事は時折起こる。

 もはや誰も正式な名前を呼ぶこともないこの街の外れには、大きなダンジョンが存在する。それだけなら別にそんな大層な名前で呼ぶような話でもないのだが、

 とある魔法使いが領主の宝を盗みだし、そしてダンジョンの中に住み着いてから、既に十年以上が経過している。


 街の宝が何なのかは様々な噂が立った。

 ある者は不老長寿の妙薬であると言い、ある者は断てぬ物のない名剣であると言う。

 正解は誰にもわからないが、とにかく領主にとってはそれが命の次に大事なものであるらしい事は、街の者ならば誰でも知っている。

 領主が魔法使いの首と宝に莫大な懸賞金をかけたからだ。

 一生遊んで暮らせるのではないかという程の額は瞬く間に街だけでなく周囲の国々にも広まり、方々から流しの冒険者や傭兵達が集まるようになってしまった。

 ダンジョンに潜る人たちの事をこの街では探索者と呼ぶ。彼らは日々ダンジョンに潜り、街で暮らしている。


 昔は僕も一攫千金を夢見てこの街にやってきた探索者の一人だった。

 それなりに経験を積んで、それなりに実力もついて、それなりにパーティメンバーからの信頼も得られた頃、探索中の事故で魔法が使えない身となってしまい、現役を引退する事になった。

 今更故郷に帰る気にもなれず、探索者としてやっていくうちに身についた鑑定スキルの高さを活かして、今は街の隅でアイテムの鑑定屋を営んでいる。

 

 アイテムの鑑定と言っても、単純に値段を付けるだけではない。

 この世には、とかく真っ当でないアイテムというものが数多く存在するのだ。

 迷宮に落ちている様々なアイテムの大半は素性も分からないもので、その中には魔法の力が付与されていたり、呪われていたりするものなのだ。

 迷宮街で鑑定屋をやるなら、その辺りがわかるようでなければ成り立たない。

 むしろ僕は、その真っ当でないアイテムの鑑定で有名になってしまい、今に至るのだった。もしかしたら探索者時代より稼いでいるかもしれない。


 そして今日もダンジョンから様々なアイテムが持ち込まれ、探索者も毎日のようにダンジョンに潜り続ける。


 今の所、目的を達成した探索者はいない。

 

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