第17話 最後の文化祭2日目と男子高校生①

第17話 最後の文化祭2日目と男子高校生①

 僕たちが高校生として過ごす本当に最後の文化祭という日、校内は昨日よりも活気づいていた。それもそのはずだ。文化祭最終日の今日は、昨日以上に色々なイベントがあるのだ。


 朝から体育館では、先生たちのかくし芸大会が行われており、どっと沸いているのが校内にも聞こえてくる。出店を出しているクラスも、今日売り払ってしまわないといけないため、昨日よりも客引きの声が活発だ。


 そんな中で昨日から脱兎の如くものすごい勢いで広まっているのが、一臣くんの噂だ。昨日の時点で、僕のクラスの人たちがほぼ知っていたから、3年には広まり切っているだろうし、下級生にも広まり切るのは時間の問題だろう。


「……ああ、もう……俺の何がいけなかったんだろう……。」


 しかしそんな中でなぜか、噂の的になっている一臣くんよりも、吉瀬くんの方がダメージを受けている。午前中は1時間だけが自由時間だからということで、多目的教室で蓬さんと一緒にお茶をしていると、これ見よがしに吉瀬くんは僕の隣に座り、項垂れている。なんなら、僕に全体重を預けてくる。


「ど、どうしたの……?」


 吉瀬くんに何があったのか分からないため、とりあえず理由を尋ねるしかない。


「……吉永さんに少し距離を置こうって言われた……。」

「えっ。」

「それは、ご愁傷様。」

「山崎はもっとオブラートに包んでくれよ。」

「だって、吉瀬が吉永さんになんかしちゃったんでしょ。」

「……おそらく……。」

「なにしたの?」


 僕は遠慮がちに、聞いてみた。


「……それが、分からないんだよ。昨日の帰りまでは普通だったし。一緒に帰ってたときも。だけど、家に帰って電話かかってきて急に“少し距離おきたい”って。」

「急に?」

「うん。」

「理由は聞かなかったの?」

「聞いても教えてくれなくて。」


 吉永さんは、理由もなしに距離を置きたいという人じゃない。だから、なにか彼女の思うところがあったのは確実だけれど、理由を教えてくれないとなると吉瀬くんのこの落ち込みようも頷ける。


「そっか……。今日、吉永さんと一緒に文化祭を回る予定があるから、それとなく聞いてみようか?」

「え……。恩田、彼氏の俺を差し置いて俺の彼女と遊ぶの?」

「ちょ……真顔で言うのやめてよ、怖いから。」

「ずるいよ~。恩田だけずるいよ~。」

「吉永さんと二人きりじゃないから。一臣くんも一緒だから。」

「えっ。丸林も一緒なの?」

「うん。前から3人で回ろうって約束してたから。」

「そっか……。」


 すると、吉瀬くんは複雑そうな顔をした。


「どうしたの?一臣くんが一緒だとなんかまずい?」

「いや……。丸林ってゲイなんだろ……?だから、大丈夫なのかなあと思って。」

「大丈夫って何が?」

「いや、分かんないけど。俺、あんまりそういうの気持ちよく認められるタイプじゃなくてさ。……なんていうか……。」


 それで僕はピンときた。


「ひょっとして、昨日の吉永さんとの帰り道で、一臣くんの話になった?」

「え?あー、どうだったかな。でも、噂になってたし、したんじゃないかな。」

「なるほど。」


 帰りは普通だったけれど、帰った後の電話でそう言われたのであれば、きっとそれしかない。吉永さんに聞いてみなければ実際のところは分からないけれど、一臣くんの性的指向についての吉瀬くんの何らかの発言が、きっと吉永さんの中で何か納得できなかった部分があるのだと思う。


「……謝るしかないかなあ。」

「何について謝るの?」


 淡々と蓬さんはそう言った。


「だって、距離を置こうってことは、吉永さんが俺に対して何か怒ってるってことだろ?だったら、謝ることからじゃない?」

「でも吉瀬は、吉永さんが何について怒ってるのか分からないんでしょ?しかも、話を聞いていると、現時点では怒っているかどうかも分からないじゃない。それなのに謝られたって、吉永さんだって不快だと思うけど。」

「ふ、不快?!?!」

「うん。不快。なんなら、“とりあえず謝っとこう”っていう態度に気持ちも冷めちゃうね。」

「さ、冷める?!?!」

「だって、吉永さんの気持ちを全然分かってないじゃん。少し様子見てあげなよ。吉瀬に怒ってるとかじゃなくて、何か思うところがあったあんだと思うよ。」

「……じゃあ距離置かなくても……。」

「吉瀬が分かってくれる人なら、吉永さんだって距離置かなかったんじゃないの?今は、“話せるようになったら話してね”くらいが一番良いと思うけど。」


 吉瀬くんは、蓬さんのボディーブローが効いたらしく、さらに項垂れていた。そのせいで、僕への体重の預け方が増している。サッカー部の吉瀬くんは、僕よりも明らかに筋肉量があるため、重い。


「千尋、ちゃんと言ってやんなさい。重いって。」

「重い?!?!」

「ちょ、違う。いや、違うくないけど。吉瀬くん、体重が重いよ。」

「体重?あ、ごめん……。」


 そう言いながら吉瀬くんは僕にかけていた体重を緩めてくれた。


「とりあえず、吉永さんにはそれとなく聞いてみるからさ。吉瀬くんは予定通り文化祭を楽しみなよ。」

「楽しめる気がしない……。」

「吉瀬って案外女々しいのね。」


 蓬さんは吉瀬くんに止めを刺した。






 午前中の受付の担当を終えると、僕は蓬さんと「また後で」と言って多目的教室へと向かった。蓬さんはこの後、穂高さんたちとお昼ご飯を一緒に食べる約束をしているそうで、僕も一臣くんと吉永さんの3人で回る約束をしている。それで、多目的教室で待ち合わせをしているのだ。


 何気なく多目的教室に向かうために5組の前を通ろうとすると、廊下に石川さんたちのグループが居た。僕を舐め回すように見ながら、クスクスと笑っている。その瞬間、僕は中学時代の嫌な思い出がフラッシュバックした。


 僕のことを地味だと言い、気持ち悪いという視線を浴びせるあの嫌悪感。僕は何もしていないはずなのに、勝手に虚像を作り上げられて勝手に傷つけられる。


 ヘドロのような周りの視線なんて無視したらいいはずなのに、臆病者の僕は無視することもそれに立ち向かうこともできない。そして、僕の心は蝕まれていく。


 あれから何年も経つはずなのに、こうしたふとしたことをきっかけに、劣等感が顔を出す。そして、“やっぱり僕は変われていないんじゃないか”という気持ちになる。


 石川さんたちの前を通り過ぎる足取りが重い。たった数秒しかかからないはずなのに、数十分に思える。


「男同士とか、本当に気持ち悪いよねー。」


 石川さんたちのグループの誰かが発したその言葉に、僕はふと足を止めてしまった。


「気持ち悪い?何が気持ち悪いの?」


 僕が話しかけてくると思わなかったのか、石川さんたちはたじろいだ。だけどそれも一瞬で、またすぐに軽蔑を含んだ笑みを僕に向けてくる。


「普通に考えて気持ち悪いでしょ。だって、男同士だよ?それともなに。恩田くんってば、男同士にハマっちゃってるの?」


 石川さんがそう言うと、彼女たちは「いやだ、汚い」とか言いながら、またクスクスと笑い出した。話が見えなさ過ぎて、僕は呆れてくる。


「言っていることが意味不明なんだけど。そもそもなに?男同士って。」

「そんなの、恩田くんが一番分かってることなんじゃないの?だって、丸林くんと付き合ってるんでしょ?」

「は?僕が付き合ってるのは蓬さんなんだけど。」

「でもゲイの丸林くんと仲良しじゃん。それに、丸林くんは恩田くんのことが好きみたいだし?ひょっとしてもう、そういう仲なんじゃないの?」

「一臣くんに告白すらされたことないんだけど……。それにもし、一臣くんが僕のことを好きだったとしても、石川さんたちに何の関係があるのかな?」

「えー。関係ないけど、単純に気持ち悪いじゃん。だって、男同士だよ?生産性ないじゃん。」

「生産性?」

「男同士だったら、子供作れないじゃん。生物である限り、子孫を残す本能を大切にしなくてどうするの?自然の摂理に反することに、気持ち悪いっていう感情を抱いて何が悪いの?」


 気持ち悪いっていう感情を抱くのは、石川さんの自由だ。心は誰にも縛られない。


「それは石川さんの自由だよ。だからって他人のプライバシーを広めていいことになるのかな?」

「プライバシーって。丸林くんが男を好きなことってプライバシーなの?私はみんなに教えてあげてるだけよ。丸林くんって、女の子にモテるからさ。告白しても無駄だよって。そしたらみんな諦められるじゃん。」

「大きなお世話だね。わざわざ広める必要あるのかな?理解に苦しむよ。」

「はあ?」


 僕と石川さんの間にぴりっとした空気が流れる。少しでも火の粉が飛び散れば、あっという間に燃え広がりそうだ。


「恩田くん!こんなところに居たの?遅いから来ちゃったよ~。」


 そこへ割って入ってきたのは、吉永さんだった。


 吉永さんの言葉にはっとして周りを見ると、人だかりができていた。僕と石川さんのやりとりを大勢の人が見守っていたらしい。5組の教室から乗り出して僕たちを見ている人も居る。


「ごめん、吉永さん。行こう。」


 吉永さんが入ってきたことで、石川さんたちもこれでお終いとばかりに5組の教室の中へと入って行った。僕も彼女たちには目をくれず、吉永さんと一緒に多目的教室へと足を進める。


 正直、吉永さんが迎えに来てくれて助かった。あのままだったら、どうやって収めればよかったのか分からない。


「吉永さん、ありがとう。助かったよ。」


 だから、多目的教室で落ち着いて吉永さんと向かい合ったときに、僕は御礼を言った。


「だって大変な空気になってたんだもの。恩田くん、絶対に終わり方分からないでしょ。」


 吉永さんにはお見通しだったようだ。僕は、苦笑を漏らす。


「うん。あの時はヒートアップしてて収拾まで考えていなかったけど、冷静になるとやばいね。どうやって終わったらよかったのか、今でも考え付かないよ。」

「それにしても、どうして石川さんたちとあんなことになっていたの?」


 僕は、ことのあらましを吉永さんに話した。


「そうだったんだ……。」

「許せないよ。フラれた腹いせに、一臣くんの噂を流すなんて。昨日、石川さんたちが僕のことを見に来てたんだけど、一臣くんの好きな人がどんな人なのか見に来てたってことだったんだろうね。本当にひどい話だよ。」

「本当にそうだね。……恩田くんは、丸林くんが恩田くんを好きだっていう話、どう思うの?」

「どうって?」

「それこそ、石川さんみたいに、気持ち悪いみたいな。」


 一臣くんは前々から、好きな人が居るっていうことを教えてくれても、誰なのかまでは教えてくれなかった。そして、吉永さんは一臣くんの好きな人が誰なのかを知っているうえで、僕にこうして聞いている。


 そうなると、その答えは明白だ。だけど僕は、本人から聞かされたわけじゃない。


「気持ち悪いとかは全然ないよ。一臣くんが誰を好きになるかなんて、一臣くんの自由だし。……それに、気持ち悪いって思う人の気持ちを否定もしないよ。気持ち悪いって思っちゃいけないとも思わないし。こればかりは、お互いが認め合うしかないと思うんだ。」

「そうだね。私もそう思う。」

「……吉永さんは、吉瀬くんと距離を置くことにしたんだってね。それって、一臣くんのことと関係あるでしょ?」


 吉永さんが深く踏み込んで話をしてきてくれたから、僕も同じように踏み込んだ話をすることにした。全く関係のない話でもないから、むしろここで聞くべきだと思った。


「……吉瀬くんから聞いたの?」

「うん。朝一番にグチグチと聞かされたよ。」


 僕が冗談めかして答えると、吉永さんはふっと笑みを携えた。


「ごめんね、なんか巻き込んだみたいになって。」

「ううん。巻き込まれたというか、当事者というかなんだかよく分からないけれど。」

「確かに。……恩田くんの言う通り、吉瀬くんと距離を置こうと思ったのは、丸林くんの話をしたからだよ。吉瀬くんが、嫌悪感を出したからね。ちょっとこのままやっていけるか考えたくなったというか……。」

「それって、一臣くんと吉永さんが仲良しだから?それとも、考え方の違い?」


 そう尋ねると、吉永さんは天井を見上げた。そして思いっきり空気を吸い込んだかと思うと、深く長く息を吐く。そして、ふっと呼吸を整えると、真っ直ぐに僕を見た。


「恩田くんとこれだけ仲良くしながら、私、1つだけ言っていないことがあるの。」

「なに?」

「私、腐女子なの。」

「うん。なんだかそんな気がしてた。」

「えっ?」


 僕の回答に、吉永さんが大きな瞳をさらに大きくさせた。これだけ仲良くしていれば、なんとなく分かるのだけれど。


「いや、むしろ、なぜバレてないと思っていたのかの方が知りたいよ。」

「嘘……。じゃあ、丸林くんが恩田くんのことを好きってことも気づいてた?」

「それはさっき石川さんに聞かされて知ったよ。だけど、言われてみれば、そう考えると辻褄が合うなあってことばかりで。吉永さんが一臣くんの気持ちに気付いちゃったのも、腐女子だからでしょ?大方、僕と一臣くんを掛け合わせていたんでしょ?」

「なっ……!」


 吉永さんは顔を真っ赤にさせた。どうやら、その通りだったらしい。


「私の最大の秘密が……。」

「友達で妄想してたなんて、吉永さんレベル高すぎでしょ。」

「だってそれは、恩田くんと丸林くんがあまりにも絵になるから……。」


 肩をすぼめて恐縮する吉永さんの姿が可笑しくて、僕は堪え切れなかった。


「もう、笑わないでよ!」

「いや、笑うでしょ。それで?吉瀬くんと距離を置いた理由は?」

「それは……。丸林くんに対するあんな思いを聞かされたら、私が腐女子ということも受け入れてもらえないだろうなって思って。私も恩田くんと同じで、どう思うかはその人の自由だと思うから、吉瀬くんに分かってもらおうと努力することが正しいことなのか、自分でちゃんと考えたいなと思ったの。」

「そういうことだったんだ。ということは、吉瀬くんのことが好きだからこそってこと?嫌悪する吉瀬くんが嫌になったわけじゃなく?」

「……そういうことだね。」

「そっか……。でもそれだったら、理由は言えなくても吉瀬くんのことは好きだってことは伝えてあげて欲しいな。」

「え?」

「理由も分からないまま距離を置こうなんて言われたら、吉瀬くんからしたら、別れたいって言われているようにしか聞こえないよ。実際、滅茶苦茶落ち込んでいたし。」

「そっか……。そこまで考え切れていなかったかも。」

「それに案外、吉瀬くんって受け入れてくれそうな気がするけどなあ。」

「そう?昨日の口ぶりだと、全否定してたよ。」

「うーん。こればっかりは、僕も吉瀬くんとちゃんと話してないから分からないけど。否定する人の中には、よく分かっていないから否定している人も居ると思うんだよね。吉瀬くんはどちらかと言うと、そっちかなと思って。吉瀬くんが身近に感じられるところに話を落とし込むと、理解してくれる人のような気がするけどなあ。」

「そうかなあ。」

「いずれにしろ、吉永さんが腐女子だってことをカミングアウトするかどうか決めるためにも、吉瀬くんの考えは聞いた方がいいような気がするなあ。後は、吉永さん自身もどうなのか、だよね。腐女子ってことを理解してもらわなくても良いのか、それともぶつかっていきたいのか。」

「……嫌われたくない……。」

「それをそのまま伝えればいいんじゃないのかな?嫌われたくないから話したくないことがあるって。」

「それでいいの?」

「それでいいと思うよ。」


 吉瀬くんが待っているのは、吉永さんの気持ちだ。でも、吉永さんの気持ちも分かる気はする。ありのままの自分を好きになって欲しいけれど、嫌われたらどうしようっていう気持ち。


 僕の場合は、最初から蓬さんが僕の少女漫画好きを知ってくれていたから良かったけれど、もしそうじゃなかったらって考えると、吉永さんみたいに悩んだはずだ。実際、蓬さんを含め一臣くんや吉永さん以外の人には言っていないし。


 だけど、言っていないからといって、付き合っていけないわけでもない。要は自分がどういう付き合いを相手としてきたいかだと思うのだ。


「ありがとう、恩田くん。吉瀬くんのこと教えてくれて。」

「いいえ。吉瀬くんにも、それとなく伝えてていい?吉永さんに聞いてみるって言ってるから。決して吉瀬くんのことが嫌になったわけじゃないみたいだよって。」

「うん。ごめんね、巻き込んで。」

「ううん。最初から巻き込まれてるから。」


 僕がそう言うと、吉永さんは安心したように笑った。


「それにしても一臣くん、遅いね。」

「確かに。」


 約束していた時間から10分ほど過ぎている。多目的教室には僕たち以外には居ないから、僕たちが話をしないとしんと静まり返る。


「ちょっと外見てみようかな。」


 僕は座っていた椅子から立ち上がり、多目的教室の扉を開ける。そして、そこから顔を出して外を覗いた。


 すると、そこには蹲るオレンジ色の髪の毛があった。オレンジ色の髪の毛は、彼以外に僕は知らない。


「えっ。一臣くん?」


 僕が声をかけると、彼は勢いよく頭をあげた。すると、彼の綺麗なはずの顔は皺くちゃで、瞳から溢れたであろう水分でべちゃべちゃになっていた。


「ぢびろ~~~。」


 鼻からも大量の液体が出ており、ちょっとやばい感じである。それなのに、一臣くんは僕に抱き付いてこようとする。


「ちょ、ちょっと待って!それは無理!顔拭いて!!!」


 僕は必死に一臣くんの胸を両手で押し、なんとか彼の液体が僕につかないように死守する。それに気づいた吉永さんが慌てて僕たちの方へとやってきた。


「と、とりあえず二人とも教室に入って。」


 吉永さんに言われるままに一臣くんの身体を押さえたまま教室へとなだれ込んだ。吉永さんはそれを確認すると、多目的教室の鍵を閉める。誰も入ってこないようにするためだろう。


「ぢびろ~~~。」

「待って!ほんとに!顔!顔拭いて!!!」


 なんとかポケットからティッシュを取り出すと、僕はそれを一臣くんの顔面に押し当てた。「ぶほっ。」とか一臣くんの口から聞いたことのないような声が漏れたけど、そこは仕方ない。


 ティッシュでゴシゴシと一臣くんの顔を拭くと、ようやく綺麗な顔が出てきた。やっぱり一臣くんの顔はこうでなくちゃいけない。


 涙と鼻水を拭くと、一臣くんも落ち着いたのか、大人しく椅子に座ってくれた。


「それで?丸林くんはどうして泣いていたの?」


 僕と吉永さんは、じっくりと一臣くんの話を聞くことにした。

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