おまけ②
千尋が帰った後私は、口端が緩むのを止められなかった。どんなに頑張っても表情筋は緩み切り、ついつい頬が高く上がってしまう。
すっかり熱は下がったはずなのに、体が火照っているのが分かる。
「好きだなあ。」
昨夜の誕生日デートが最悪だったから、千尋も残念に思っていたんじゃないかと心配していたら、誕生日プレゼントを渡しに、お見舞いに来てくれた。
千尋からいただいた誕生日プレゼントは、レースやパールがあしらわれた桃色のメイクボックス。ジュエリーボックスとしても使えるものだ。
千尋がどんな顔をしてこれを買いに行ってくれたのかと思うと、嬉しくてさらににやけ顔が止まらない。
ベッドの上に寝転びながら、枕元に千尋からもらったメイクボックスを置いて、まじまじと眺める。これを見つめているだけで、千尋の照れた顔が思い浮かぶ。
それに千尋は、誕生日のお祝いもこの先もずっとしたいって言ってくれた。それって、ずっとずっと一緒に居たいって思ってくれてるってことだもんね。
昨年の誕生日のときには、今年こうやって千尋からお祝いしてもらえる関係になれるなんて、少しも想像してなかった。
千尋に話しかける勇気さえなくて、一人で居る彼をただ見つめるばかりだった。
だから、同じクラスになれて、勇気を出せて本当によかったと思う。あの時の自分を「よく頑張ったね。こんな幸せが待ってるよ」って褒めてあげたい。
「可愛いからたくさん使いたいけど、汚れちゃったら嫌だなあ。」
私はメイクボックスを優しく撫でながら、ゆっくりと目を閉じた。
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