おまけ①
明日は私の誕生日。千尋がイルミネーションデートに連れて行ってくれる予定だ。今までにこんなに楽しみだった誕生日はあっただろうか。
お気に入りの入浴剤を使ってお肌をつるつるに。髪の毛のトリートメントだって入念に。明日は一番可愛い私で千尋に会いたい。
「蓬ー!いつまでお風呂に入ってんのー?後が詰まってるんだら早くあがってきなさーい。」
「はーい!ちょっと待ってー!」
お風呂からあがったら、ちょっとお高めのパックで保湿をする。スチームをたいて、お肌のモチモチ感も増量中。
「げ。姉ちゃんなにやってんの。」
「見て分からない?明日の準備よ。」
「自分の部屋でやればいいじゃん。」
「ばか。このスチーマーお母さんのだから私の部屋なんかに持って行ったら殺されるわよ。」
「じゃあしなきゃいいじゃん。」
「ダメよ。明日は可愛くしていかなきゃいけないんだから。棗には分からないでしょうね、この女心が。きっと千尋は分かってくれるもーん。」
「うざっ。つーか早く寝ろよ。夜更かしの方が駄目だろ。」
「分かってるわよ。それに明日は髪の毛のセットとメイクで5時起きなんだから。」
「うーわっ。馬鹿だ。やべー。」
「はー?あんたいい加減にしないと、お母さんに言いつけるからね。」
「なにを?」
「え?言って良いの?あんたが友達の家に泊まってくるって言う時は大体……。」
私がそう言うと、棗は「わー!」と大きな声を出して、私の話を遮った。
ふふん。姉は弟のことを大体把握してるんだからね。弱みだってほぼ握っている。姉の情報網と勘を舐めないでほしい。
「……なんで知ってんだよ。」
「棗のことはお見通しなのよ。」
よく、女の勘はするどいなんて言うけれど、その通りだと思う。ただ、お母さんも気づいてて気づいていないフリをしているというのは、棗には教えてあげない。
「……ふん。せいぜい千尋くんに嫌われないように頑張れよ。」
「言われなくてもそうしますよーだ。」
あっかんべーをする私に背中を向けて、棗はリビングから出て行った。
「おおっと。棗と話していたせいでこんな時間。ネイルもしなきゃいけないのに。」
その後、ネイルをやり終えたのは23時を過ぎていた。お母さんからいい加減に寝なさいと怒られたけれど、粘って可愛いネイルを完成させた。
千尋が「可愛い」って言ってくれるのを想像しながら、お布団へともぐりこむ。
「寒いなあ。すっかり冷えちゃったな。」
心なしか、喉も少し痛いような気がする。
「明日、素敵な一日になるといいなあ。」
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