おまけ②

 文化祭2日目のお昼ご飯は、百合子と一緒に行くことにしていた。だから、午前中の当番を終えるのと同時に、私と百合子は屋台回りへと繰り出した。


1年のクラスがやっているカレーが評判ということで、そこに行こうと事前に話してあったため、まずはそこに行った。長蛇の列ができていたけど、私たちはテイクアウトにしたため、それほど時間もかからずにカレーを入手できた。


 デザートも必須ということで、カレーの近くにあったクレープで私はイチゴバニラクレープとバナナチョコクレープ、百合子はブラウニークレープを買った。


「蓬ってば2つもクレープ食べるの?」

「千尋がバナナチョコクレープ大好きなのよ。あげようと思って。」

「あんた本当に恩田のこと好きだよね。」

「そりゃそうでしょ。」


 百合子とそんな話をしながら、私たちは中庭へと向かった。中庭には、植え込みに植わって買ってきたものを食べている人がたくさんいる。私たちも同じように、そうすることにした。


「百合子はなんのトッピングにしたの?」

「私はチーズ。蓬は?」

「私は唐揚げ。」

「小さいくせによく食べますわね。」

「百合子はがりがりなんだから、もっと食べた方が良いよ。」


 ふふっと二人で笑い合う。憎まれ口をたたき合いながら過ごす文化祭も、今日が最後なんだなとか思う。


 そして、カレーを食べ終えてクレープを食べているときだった。


「あ、蓬と百合子、こんなところに居た!!!」


 私たちのところにやってきたのは、心だった。心だけじゃなくて、私も仲の良い女の子数人も一緒に、こちらに向かってやってきた。彼女たちの表情はどこか、あまりよくない話を持ってきたように思える。


「どうしたの?そんなに慌てて。」

「いや、さっき大変だったんだよ。5組のところの廊下で。」

「なにが?」

「恩田と石川さんがバチバチにやり合ってた。」

「えっ?!」


 私は思わず、大きな声が出た。なにしろ、千尋が誰かと喧嘩をしているところなんて、生まれてこのかた、一度も見たことがないからだ。まーちゃんとは何度も喧嘩していたけれど、どれでもバチバチなところは見たことがない。


「恩田が喧嘩なんてする?」

「いやもうそれが、やばかったよ。石川さんも石川さんで引かないし。恩田があんな怒りを表してるのって見たことないねって話でもちきりよ。」

「そ、それで、千尋と石川さんはどうなったの?」


 まさか、千尋に限って手をあげるなんてことはないと思うけれど、何かの拍子にという可能性もあるから心配になる。


「ああ。あの、吉永さんが上手く収めて終わりになったよ。」

「そっか……。それならよかった……。」


 吉永さんが居てくれたなら、穏便になんとかなっただろうとひとまずは安心する。でも、石川さんたちはいよいよ千尋に因縁を吹っかけてきたのかと思うと、腹の奥に沸々としたものが生まれる。


「どうする?蓬。」


 百合子が私に尋ねた。


「これはもう、全面戦争だわ。」


 私は、石川さんと対峙することに決めた。



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