おまけ②

「恩田!!!」


 みんなにカミングアウトした次の日の朝、千尋と一緒に教室に入ると大地がいの一番に千尋に駆け寄って千尋の肩を組んだ。


「ちょっと、大地?!」


 実は昨日の夜、仲の良い女の子だけのグループトークで、大地が千尋に何かしでかすかも予想を立てていたので、警戒していた。


 なのに千尋はあっさりと大地につかまった。


「お前、蓬のこと、絶対に幸せにしろよ!!!俺の分まで幸せにしないと、許さないからな!!!」


 大地は外見だけ見ると男前だし、友情に厚くていいやつだから、決してモテないわけじゃない。だけど、自分がこうと思ったら突っ走るところがある。


「野久保くん。ありがとう。やっぱり君はとてもかっこいいね。そんなこと、本当なら言えないよ。」


 だから私は、もし大地に何か言われても、とにかく大地の事を褒めるように千尋に伝えておいた。そして、それがとてもよかったらしい。


「恩田……。お前って、いいやつだな。今まで喋ったことなかったけど、蓬がお前に惚れる理由が分かるわ。お前になら蓬を任せられるわ。」


 大地は自分の味方をとことん大切にする。だから、敵じゃないって分かった時点で自分の懐に入れてしまうのだ。


「蓬。いいやつ、選んだな。」

「ありがと。応援してね。」

「当たり前だろ!」


 そんな話をしていると、教室に雄一がやってきた。


「お!蓬と恩田、一緒にきたの?あっついねー!しっかし、ギャルと真面目くんって、珍しいよなあ。」


 雄一がケラケラ笑っていると、大地が雄一の頭をはたいた。


「何言ってんだよ!恩田はめっちゃいいやつなんだよ!どっからどう見てもお似合いだろ!!!」

「なんで振られたお前がかばってんだよ!」

「うるせー!!!ちょっとでもこの2人の悪口を言ったら俺が許さないからな!!!」

「お前、この2人のなんなんだよ!」

「護衛だ!」


 雄一と大地のやりとりがおかしくなって、私はお腹を抱えて笑った。


 教室にいる人たちもみんな笑っている。


 ふと隣を見上げると、千尋もおかしそうに笑っていた。


 その様子をみて私は、口端が緩みそうになるのを必死でこらえた。


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