概要
◆本作品の紹介文
【虜囚達と夜のユリシス -The prisoners and the ulysses butterfly
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!凝縮された狂気は闇に瞬き、さらなる狂気を誘う。その渦の奥にあったのは…
非常に完成度の高いミステリーです。
また、刑務所を舞台としたお仕事小説としても楽しめます。作者様はもしや、中の人では(どっちの意味で?)と思ってしまうくらい、刑務所内の描写がリアルに感じられるのです。
登場人物たちの心理描写も丁寧で、謎解き以外の面白さも堪能できます。
主人公の鮎京は、受刑者に真摯に寄り添い更生に導こうとする刑務官。その信念のままに、彼は「すでに刑の確定した」猟奇的殺人事件を掘り起こすことを決意します。
同僚や昔の仲間を巻き込むことへの葛藤や罪悪感を抱えつつ、己の正義と信念に従い行動を起こしたのですが……
数々の謎、複雑な人間関係、受刑者の妻である美女への思い、上部からの妨…続きを読む - ★★★ Excellent!!!緻密な推理構築と感動の物語
とにかくラストがすごかった。
えも言われぬ感動がありました。
これは正しい真実を求めた青年の成長物語であり、真実を捻じ曲げようとした犯罪者の物語です。
ミステリということもあってなかなかうまい紹介文にならないと思います。
ただこの物語を楽しむにあたって、どんなヒントもここに記したくないのです。
この作者さんの作品はいくつか読んでおりますが、どれも緻密な構成、細部まで構築されている世界観と、生き生きとしたキャラクターが大きな特徴だと思います。
この作品にもそれらが大いに発揮されており、冒頭からどっぷりと作品世界に溶けむことができると思います。
なかでもこの作品はミステリー要素が特に強く、ま…続きを読む - ★★★ Excellent!!!若き刑務官が奮闘する、まさに神がかりの本格推理小説!
『天才とは緻密であること』という言葉を聞いたことがあります。
この作品を読み終わって、その言葉を思い出しました。
閉鎖的な刑務所という空間で、物語は巻き起こります。
鮎京(あゆきょう)さんという刑務官が主人公なのですが、彼がある猟奇的殺人事件に立ち向かうというストーリー。
二転三転する推理に、刑務官や警察官、医師たち関係者が翻弄され、ミステリーは進んで行きます。
物語の鍵となる、二人のユリカ。謎は謎を呼び、事件の概要が見え隠れする。
そして表れた、衝撃の真実とは……。
真実は思ってもいない方向へ動き、関係者の人生をも揺るがす時。。
立ち塞がる驚愕の真実に、その時私たちならどうする?
こ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!重厚な謎と世界観を堪能できる、名作医療ミステリーがここに!
数々の名作医療ミステリーを発表されている、作者さまの独自の世界観を堪能出来る作品です。
事件の真相を突き止めるための流れや過程がとても丁寧で、一度作品を拝見したら続きが読みたくなる不思議な魅力が伝わってくる作品です。刑務官が主人公となる作品ですが、出てくる人物たちはどれも個性的な方ばかりです。そのため刑務所というやや閉鎖的な世界が舞台となっていますが、重苦しい雰囲気などなく読めてしまう点も作者さまのスキルの賜物だと思います。
もちろん医療に関するエピソードも多数登場し、それらがすべて物語に上手く調和されています。謎を一つ解ければより濃厚な謎が待っている……という不思議なループに読者…続きを読む - ★★★ Excellent!!!張り巡らされるミスリードと感情の蜘蛛の巣
一話目を読みました。即座に思いました。(これは完結まで走りたい)稀に、そういう感情を抱かせられる作品があるのですが、この作者さまの「ミックスベリー殺人事件」がそれでした。
様々な切り口から、ミスリードの糸どころか、あらゆるところから蜘蛛の糸のように伏線と外しが襲い掛かっていつしか蜘蛛の巣になっていきます。
今作も最高でした。ネタバレは防ぎますが、ミステリーは単調であると、ただ、謎解きの推理ものに徹してしまいます。
しかし、この作者さまの文法にかかると、様々な人間が、想定した行動をとり、それゆえに想定できないラストへと結びつくのです。
それは「幕間」なる別視点が挟まるので、そこで物語の復…続きを読む - ★★★ Excellent!!!おそるべき完成度に息を呑む。刑務所を舞台とした医療ミステリー。
女性を殺害した後に臓器を抜き取る、という猟奇殺人事件の犯人として刑務所に収監された青山。しかし、その素行は凶悪犯とはとても思えないほど良好だった。
刑務官の鮎京は疑問を抱き、青山が犯したという事件について調べ始める。
……という筋立ての、本格的なミステリー小説です。
読んでみると、洪水のように押し寄せる情報量に圧倒されます。
医療に関する知識、そして刑務所の制度にまつわる知識を総動員して作り上げられたかのような物語は精緻の一言。一文一文を噛みしめるたびに「取材が行き届いているな」と唸ります。
ミステリを読む醍醐味は真相が明らかになったときの衝撃と納得感だと思いますが、本作はそれをしっか…続きを読む - ★★★ Excellent!!!ただただ圧倒される。
カクヨムコンの初期から、数々の高評価を受けていらっしゃる作者様の最新作です。
そんな前評判もあり、この方の作品はいつか絶対に読もうと決めていました。
運よく、その機会を設けることができ、さあ読むぞと最初のページをめくったら――
ただただ圧倒されました。
まずは情報量。
入念に下調べされた刑務所の知識、そして作者様の持ち味である医療の知識。
これらが余すところなく配置され、作品全体のリアリティをとてつもなく底上げしてくれます。
これほど細部にこだわった作品ですから、おのずと重厚感が生まれ、大変読みごたえのあるものに仕上がっていました。
次に表現力。
豊富な語彙により綴られた文章は、硬質で…続きを読む - ★★★ Excellent!!!散らばったピースが一気に嵌め込まれる!その緊迫と高揚の後に見えたものは
パチリ、パチリと小気味良い音を立て、一部の隙間もなく美しい絵を完成させるジグソーパズル。
本作も、散りばめられた無数のピースが綺麗に繋ぎ合わされる過程を楽しみ、出来上がりの余韻に浸れる、そんな良質なミステリーです。
主人公の鮎京君は刑務官。准看護師の資格を取り、矯正医官(刑務所のお医者さん)であるぶっきらぼうな城野医師の助手を務めています。
そんな彼の勤務先である遠州刑務所に最近収容されてきた猟奇殺人犯の青山。彼の醸し出す雰囲気や言動があまりに犯罪者らしからぬことから、鮎京は彼に興味を抱きます。
彼が常用しているとある薬に引っかかりを覚えた城野医師、そして友人の警察官カップルを巻き込み、…続きを読む