ただただ圧倒される。
- ★★★ Excellent!!!
カクヨムコンの初期から、数々の高評価を受けていらっしゃる作者様の最新作です。
そんな前評判もあり、この方の作品はいつか絶対に読もうと決めていました。
運よく、その機会を設けることができ、さあ読むぞと最初のページをめくったら――
ただただ圧倒されました。
まずは情報量。
入念に下調べされた刑務所の知識、そして作者様の持ち味である医療の知識。
これらが余すところなく配置され、作品全体のリアリティをとてつもなく底上げしてくれます。
これほど細部にこだわった作品ですから、おのずと重厚感が生まれ、大変読みごたえのあるものに仕上がっていました。
次に表現力。
豊富な語彙により綴られた文章は、硬質でありながら読みやすく、グイグイと作品の世界へと引き込んでくれます。
すべて読み終えてから文字数を確認して、20万文字を超えていたことに驚愕。
長さをまったく感じさせないほど、卓越した表現力でした。
そして濃密な心理描写。
登場人物の考え、迷い、怒り、嘆き、狂気……いずれもがダイレクトに伝わってきました。
この他、先を読ませない構成や複雑に入り組んだ人間関係、伏線などなど、挙げればキリがありません。
読みながら何度「凄い……」と呟いたことか。
内容は他の方が触れていらっしゃるので、私から敢えて語ることはしませんが、「とにかく読んで下さい、凄いから!」の一言に尽きます。
個人的には、本作がホラー・ミステリー部門の大賞候補。
願わくばライトノベルのレーベルではなく、一般文芸のハードカバーとして発刊して欲しい。
そう願わずにはいられない、珠玉の作品です。