虜囚達と夜のユリシス

銀鏡 怜尚

序幕【青山 由栄(Aoyama Yoshiharu)】

青山 由栄 の章

 刑法第199条(殺人)

  人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。

 刑法第190条(死体損壊等)

  死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、3年以下の懲役に処する。

 

 私は殺人及び死体損壊を犯した罪により無期懲役の実刑判決が言い渡され、えんしゅう刑務所に収容された。しくも犯行現場に近い静岡県西部にある浜松はままつ市のやや北部に位置する。そして私の住まいは隣県ではあるが、さほど遠くはない。物理的には近いはずなのに、社会的、法律的な距離は、異国に行くよりも遠いのではないかと思う。慣れないこの閉鎖的な空間で私の第二の人生が始まろうとしている。

「番号っ! 名前っ!」先生の点呼が所内にこだまする。

「はいっ! 631番! 青山あおやま由栄よしはる!」


 かくして私は虜囚になった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る