虜囚達と夜のユリシス

作者 銀鏡 怜尚

散らばったピースが一気に嵌め込まれる!その緊迫と高揚の後に見えたものは

  • ★★★ Excellent!!!

パチリ、パチリと小気味良い音を立て、一部の隙間もなく美しい絵を完成させるジグソーパズル。
本作も、散りばめられた無数のピースが綺麗に繋ぎ合わされる過程を楽しみ、出来上がりの余韻に浸れる、そんな良質なミステリーです。

主人公の鮎京君は刑務官。准看護師の資格を取り、矯正医官(刑務所のお医者さん)であるぶっきらぼうな城野医師の助手を務めています。
そんな彼の勤務先である遠州刑務所に最近収容されてきた猟奇殺人犯の青山。彼の醸し出す雰囲気や言動があまりに犯罪者らしからぬことから、鮎京は彼に興味を抱きます。

彼が常用しているとある薬に引っかかりを覚えた城野医師、そして友人の警察官カップルを巻き込み、鮎京は彼の犯したという猟奇殺人の真相に迫ろうとします。
ところが、青山の妻である浜松一の人気キャバ嬢「ルリ」と接点を持ったことで、事件に関わりのありそうな重要人物が見つかったり、青山の病気に関わる謎がますます深まったりと、真相へ辿り着く道は混迷を極めていきます。

途中、「おい、鮎京っ!しっかりしろっ!」とつい怒鳴りたくなったりする場面があります(苦笑)
ぶっきらぼうだけれど出来る男である城野医師が、勘の良さと医療知識を生かして欠けたピースを探しそれを繋げていく様に惚れ惚れします。
事件の核心にいよいよ触れようという大事な時に、城野医師のアルファロメオを上手く運転できず、怒鳴られながら悪戦苦闘する鮎京君(苦笑)
※作風は硬質でシリアスです。

けれども、やはり本作の主役は鮎京君でなければいけない。
彼が最後の一ピースとならなければ、これほどまでに読者を魅了するラストは完成しない。
怒涛と圧巻のクライマックスを経てのこの余韻、あなたもぜひ堪能してみては。

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読了後に気づき、あらためて「読ませる」小説であることを再認識いたしました。
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