第7夜 3・27 七日目のベランダ

3・27 七日目のベランダ


 七日目。一週間が経った。タバコに火をつける。今日も文学はベランダで息をする。

 また気取ったことを書いてしまった。まあでも、ひどい飽き性のおれにしちゃ、よく一週間も続いてるし、たまにはいいじゃないか。

 三日目くらいには、実は一週間もたないと思っていた。毎日、十一時から十二時のあいだの、同じベランダの夜で書くんだ。そう決めてしまったもんだから、景色は同じだし、書くこともなくなる。そう思っていた。それで、おとといは苦しまぎれにエッセイでのり切った。この書き捨てはぜんぶ駄文だが、なかでもあれはとび切りのごみだ。なんだ、ボンカレーって。なんだ、安物の矜持って。気取った言葉使いやがるくせ、中身はまるきしカラッぽじゃないか。でもまあ、よく一週間もった。

 タバコは毎日吸っている。これを書き始めるまでは、こんなもの、たまの酒の合間にしか吸わなかった。それが、これをはじめたら三日でひと箱だ。あしたは、またコンビニに行かなきゃならない。最後の一本に火をつけた。

 最後の一本は、さみしい。三日で吸ったから、箱はきれいだ。それが、よけいさみしい。もう、箱のことを気にするのは、やめよう。

 変わらないベランダの夜は、変わるらしい。七日前は真正面だった月が、今日はまだ東の空にある。新宿の上の、高い空。戦艦新宿は本日も停泊中。満月は、気づけばすこし欠けていた。七日目の桜は、もう咲いたろうか。 (了)

 

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