第3夜 3・23 タバコの話
3・23 タバコの話
三日目。今日もメンソールに火をつけた。昨日切らしてしまったので、セブンスターを買いにいった。書くか寝るかのボサボサ頭に、パーカー一枚かぶっていくのは、たとえコンビニ店員がやる気のないバイトだとしても、少し恥かしい。でも、これがなければ書けないのだから、仕方ない。
コルクボードの上には、あたらしく灰皿が置かれた。近所の百均で買った安物だ。この真っ白いとう器が、どんどんまっ黒になればいい。この白と肺がよごれた分だけ、おれの文章はうまくなる。あたらしい灰皿に、あたらしいセブンスターの箱。一本目のタバコはいい。お菓子の包みをあけるのと、よく似ている。パキっとしたタバコの箱と、しわのない金紙。おれはいつもこれをむしり取らずにきれいなまま吸おうと思うけど、うまくいかない。気づけば箱も、くしゃくしゃになっている。ジッポーのさびた金色は、変わらない。
どうもタバコの話だけで今日の分は終ってしまいそうだ。ついでだから、書いておく。おれはジッポーのあのにおいが好きだ。純正のオイルでないといけない。あのにおいをかぐと、おれはいつも冬の夜を思いだす。だからタバコは冬のベランダにかぎる。吸うのはもちろんセブンスターだ。東京でもよくみえるオリオン座の七ツ星を見て、セブンスターを吸う。なかなかしゃれてると思うけど、どうだろう。
最後の二行になった。タイムアタックは失敗だった。最後の一吸いに、間に合わなかった。これで字余りだ。あしたは四日目、三日坊主にならないことを願う。(了)
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