第2夜 3・22 月光とメンソール

3・22 月光とメンソール


 二日目、昼間はいろいろなことを考えていた。今日の三枚を埋める為に、いろいろなことを考えた。そのいくつかは、久しぶりに少し進んだ童話にもり込まれた。あの童話は、きっと完成するだろう。いちおう、「コンテスト応ボ中」とはなっているが、正直いまさらだ。もう、百万円を狙おうだとか、コンテストに出そうとか、多くの人に読んでもらおうとかいうのは、やめた。おれはまだ、そんなことを言えるような立場にない。そんなことを言ってられる程、文学をやったわけでもない。やらないで、どうしてできるってんだ。そのことに、ようやく気づいた。だからあれは、謙虚に書く。読んでくれて、お情けの「お気に入り」をしてくれた数名の読者には申し訳ないけど、あれはたった一人に向けて書く。たった一人だけに向けた長い手紙を、彼の将来にほんの一瞬でも記憶を残す火花になればいいと思って書く。それであの童話の供養はおしまいだ。

 今書いていて、つい数十秒前は、三枚なんか余裕だと思っていたけど、あの童話のことを書いたら、急に書けなくなってしまった。だからこうして、中身のない文字で、ムダに点丸を多く使って、行を埋めている。よし、これで五行ちょっと埋めた。もうすぐ六行だ。よし。ちょうどメンソールを一本吸い切った。

 あしたからは、一本吸い切るまでに三枚書くということに挑戦してみよう。

 今日は満月だろうか。コルクボードの月光がきれいだ。         (了)

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