第94夜 6・22 蠢動
6・22 蠢動
無窮動の昨日は、過ぎた。今日は、いろいろなことが動き出した。
まずひとつ、週末はまた北へ行くことになった。村でお世話になっている人が、遊びに来ないか、と誘ってくれた。いつか、青年の遠い夢の話を書いた。その一歩が、動き出した気がした。
それから、金曜には友川カズキのライブに行くことにした。福島泰樹の絶叫に衝撃を受けて以来、どうしても気になって、ずっと聴いていた。声に、言葉に、きっとまた会える。ライブには、少年も行きたいと言った。学校帰りに待ち合わせて、二人で行く。きっと、良い夜になるだろう。
ぽつりぽつりと、ここにも書いて、ずっとぼんやり考えていたことが、少しずつ、動き出して行く夜だ。今日は軽快に筆が進む。此処ではない何処かへと向かう、はじまりの小さなさざ波を起こす、風が吹いている。そして、気がつけばもうすぐ百夜だ。
動き出していくものがあれば、閉じて過ぎ去っていくものもある。この文章も、そのひとつなのだろう。五年住み続けた六階のマンションは、脱出すべき此処の中心だ。そのベランダで書きつづけるかぎり、僕はまた此処へ戻されるしかない。ならば、ここらでひとつ、動き出すべきなのかもしれない。その為に、百夜というのは、良い区切りだ。いっそ、この夜にかこつけて、決断しよう。
この文章は、百夜書いたら、終わりだ。
此処ではない何処かへ行くために、閉じていくべきものもある。だから、これはもうすぐ終わりだ。百夜で、一度おしまいにしよう。此処ではない何処かへ、動き出すために。(了)
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