第100夜 6・28 グランド・フィナーレ
6・28 グランド・フィナーレ
この夜がやって来た。第百夜、グランド・フィナーレ。まあそんな大したものなどやってはいない。でも、おれにしちゃ、ここまでよく書いた。
曲がりなりにも三月つづけて、それなりの量を書くことができた。この文の読者はおれひとりなのだから、まずはそのくらいで満足としておくのが、せいぜいだろう。
このご時世に、純文学なんてクセモノを。これを書くようになってから、それまで読まなかった私小説を読んだ。聞くはずもなかった音楽を聴いた。銀河鉄道一辺倒だった僕が、これを書いてから、生きてるって言ってみろだ。どこまでもどこまでも一緒に行こう。そして向こう側で、生きてるって言ってみろ。それは元来、正反対の二つだ。その二つが、今は二つとももう僕だ。その振れ幅は一貫しない自己のブレだとも言えるが、人生の価値とは、きっとその振れ幅の大きさのことだ。清濁あわせ持つ人間は、思想だ。詩的や思想的に留まるのではなく、この生すべてをもってひとつの詩でありたい。この身体すべてでもってひとつの思想でありたい。
此処ではない何処かへ。それを示す、僕という思想。田んぼの真ん中でゴオルデン・バットを吹かし、星の下で生きてるって言ってみろと絶叫する。少年と高原に住む夢を見ながら、ぼろぼろで新宿の雑踏をさまよっている。何者でもないまま、何者にでも、なってみせる。僕は何者でもないという思想を描こう。この文はその為のひとつの記録だ。
文章は終わっても、夜は終わらない。僕はまた、此処ではない何処かへ行くだけだ。(完)
このご時世に、絶対に流行らない純文学などというものをやってみようと思う。それも、誰一人読みやしない、私小説というやつを。 悠月 @yuzuki1523
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