このご時世に、絶対に流行らない純文学などというものをやってみようと思う。それも、誰一人読みやしない、私小説というやつを。

作者 悠月

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★★★ Excellent!!!

 私小説的なものを書きたいと思ったこともある。淡々と、ちょっと感じたことを、徒然と語る小説。誰も得しない小説を、だ。
 この作品の著者はズルい。『想定読者は自分一人』と言いながら、文章の中で語りかける。「俺の思考、知りたくない?」って。
 一話目を読んだ時点で知りたくないわけがないじゃない。

 やられた。でも、気持ちの良いやられかた。とても楽しい。

★★★ Excellent!!!

一気読みしたぜ。
斜に構えてるひねくれたダーティな感じの男が目に浮かぶ。
ダーティはそのままの意味じゃない。

タバコ好きな悪役のような男のフィルターを通さない素直な感覚が病みつきになりそうだ。

これは日記でもあり、私小説でもある。
心では『復讐』という単語を使い、底では『憧れ・願い』といったものが見え隠れする。

燃え尽きた灰というイメージを感じさせる内容。
だが、それは落ちる前に吸い込むことで一瞬赤く熱帯びた色を示す。

詩人でもあり、文学者でもある。

この男をカッコいいと思った。

★★★ Excellent!!!

世界には「掟」がある。

大多数が正しいと思うことを不文律とする「掟」が。
けっして「掟」を疑ってはいけない。
疑わないことで、世間という浄土は守られているのだから。
多数決の勝者にならなかった者は、「掟」を蔑ろにする者
すなわち傲慢な者、如何わしい者として、烙印をおされる。

「掟」を破ったり、抜けみちを考えたりすることは
つねに悪い人間のしわざと見做される。

白い羊の群れに紛れこんでしまった、黒い羊。

白い羊としてこの世に生を受けたなら
どんなに幸福だっただろう。

それでも黒い羊として生まれてしまったからには
「掟」とはなにかと自分自身に問いかけずにはいられない。

健康で、考えるよりもまえに真っすぐ立って歩ける
「背骨」をもつひとは、「掟」に疑問などもたない。
「背骨」をもたず、なにが背骨かと考えつづけることの
苦しさをわたしも知っている。

その「背骨」をもたない自分、というものに
いつも後ろめたさを感じてきた。

「共感」という言葉は嫌いだし
この作品の著者もおそらく読者に
そんな感情を望んではいないと思う。

それでも百夜のあとに感じた解放に
なんだかわたしまで嬉しくなってしまった。
そして夏祭りのあとのような淋しさを感じた。

いまではないいつか、ここではないどこか。
まだ見ぬ彼方から吹く風が真夜中を渡りながら
わたしの心を通りすぎていった。

いくつもの夜を数えて、たどりつく明日。
眠りから醒めたとき、いつかどこでもない場所にいる自分を夢見て。

★★★ Excellent!!!

(*追伸)

この男、勝手で わがままにつき。

いつ、何処にでも 行ってしまいそうで
ずっと、此処に 籠っていそうで
掴み切れない 現代に 迷い込んでしまった男。

時代錯誤で、郷愁病で、ナルシストで、
ロマンチストで、煙草吸い過ぎで、
いつまでも 影を 追い続けていて、透明で。

ハードボイルドを 気取っているけど、中身は少し半熟。
そんな人だから、愛されても 気づかない。
ここを楽しみに待ってるファンが 大勢いるみたい、だよ。

私小説といいながら、ここにいるあなたは本当のあなたなの。
きっと、君にも わからないのかもね。

雨降り予報が告げられると、雨の詩を詠む こどもになる。
素直な心と 対峙する時間は 甘くて 苦い。

辛くなったら、固執することはないよ。
いつでも 自由に こころを 羽ばたかせればいい。
本棚が どこか 別の本棚にも つながっているといいね。
どこかの星に行ける 扉だったら、いいのにね。



* 7. 7 100夜の記念。 七夕に 勝手に送る。

こちら、とある 勇気のない 小さな惑星。
遠い星からの物語は 終わってしまった。

透明なリボンに この言葉を 打ち込み、宇宙空間に乗せる。
揺蕩う その帯は 何万年先に 目的地に 辿り着けるのだろうか。

或る夜、地球上では、新宿という場所で
金の蝙蝠と 赤い幽かな 愁う蛍が 浮遊しているのが 見られたという。
ふたつは、航空灯に向かいし、二つの影。

煙草青年の 毎夜 発した言葉は、鉱石の中に、薄荷結晶の中に
チェロの音色に、生まれ故郷に、未来の行く先に 吸い込まれて旅立った。

ことの終わりに、書き添えてみる。
決して消えることなく、君の文字が 続いていきますように。
音符のように どこかにそっと乗せて、誰かの耳に 届きますよう。

この小さな惑星は、存在し得る限り
君の星からの言葉を 読… 続きを読む

★★ Very Good!!


思わず音読してしまいました。

ブログや日記を読んでる気にもなりますが、どこかハードボイルドです。



途中からがらりと変わりますね。偉そうなことをあれこれ言う気はないですが、これからも時々読みに来たいです。同じ目をした少年はいろんなところにいて、多分私自身のなかにも思い当たるふしがあります。〔追記〕

★★★ Excellent!!!

コツコツ、と。心を軽くノックする作品。
ガツンとした衝撃もなければ心を踊らせるわけでもない。
包み隠さない、灰色の文。ちょっとだけ周りを細かく見つめて感傷に浸る。自身を気取らない。けど純文学気取りの作品。

だからこそここまで心に届くのだろう。静かに優しく入ってくるのだろう。読者の心に妙な反発を許さない。とてもいい作品だと思う。

★★★ Excellent!!!

かつて、明治という時代においては文学というものもひとつの国家プロジェクトであった。
当時の文学は、近代的国家を成立させる一連の運動とともにあったので、それは伝奇といわれる中世の文芸のカウンターを目指すことになる。
私小説というものも、そうした一連の運動の中で試みられたひとつの形態と、とらえられるだろう。
つまり、近代的自我を描くという試み。
それは島尾 敏雄の「死の棘」においてひとつの終着点をみたように思える。
共同体からこぼれ落ちていくどこへもたどりつけないような、ひとつの自我。
それを描くことは今日において、アクチュアルな問題と向き合っているとはいいいがたい。

だから、どうだというのか。

そもそも書く意味なぞ問うな。
もし、書くことに意味があるとすれば、ドゥルーズがかつて語ったようなあの言葉。
「自分にとってよく判らないこと以外に、何を書く必要があるのか」
書いた着地点が、自身にとって未知であるのならそれは私小説としてとても重要なことかもしれない。