第33話 文化祭実行委員(巨乳)に挟まれる陰キャ男子
「ふっ……わたしがやれば、万事解決」
サラダの皿を流しに置きながら、してやったりといった顔の雪川乃絵留。
「い、いやいや、乃絵留? マジで言ってる? てかそんなの許されんの」
「許されるも何も……春原さん、あなたが先生に許可を取ってきてもらえるかしら」
「え、ええ……そんな急に言われても」
人見と春原はさすがに困惑の表情を浮かべる。
俺も聞いた時はびっくりしたが……雪川の言いたいことはよく分かった。
文化祭の主導権が優等生グループだけにあった昨年の文化祭は、ギャルグループにとって居心地が悪くなるのは当然であり、その上で自分たちのアイデンティティである派手な髪色を戻すようにも言われた。
そんな状況でも雪川は、人見たちも参加できるように一人で優等生グループを説得していたらしいし……雪川本人としても色々と思うところがあるのだろう。
「分かったよ雪川。それなら俺が実行委員辞めて雪川がやればいい。ギャルグループの中心にいるお前がやるなら別に俺は要らないだろうし」
「ダメよ。遥希も実行委員をやるの」
「はあ?」
自分がギャルグループを代表してやるって言い出したくせに、なぜか俺をやめさせてくれない。
「遥希は実行委員におけるフラットで稀有な存在だもの。ギャル、優等生、男子……クラス内の全てに精通している」
「いや、ロクにどれとも精通してないし、普通にぼっちなんだが」
「なに? 遥希はわたしと実行委員をしたくないのかしら」
雪川はムスッと不機嫌顔で俺の方を見てくる。
したい、したくないって問題じゃないだろ! 普通に考えて!
「あのー? あたしも梶本くんにはいて欲しいなぁと思ってて」
「は、春原まで」
「だって雪川さんと二人で実行委員になっても、上手くやれなさそうだし……」
「あなた。もしかしてわたしが嫌いって言ったから根に持っているの?」
「ほら、見ての通りこんな感じだし」
確かに……春原と雪川が一緒に協力してクラスをまとめるのは……ちょっと無理があるか。
「転校生もやるしかないよ。私じゃ春原たちとまた喧嘩になるだけだし、乃絵留のワガママ聞いてやんな」
「はぁ……」
なぜ俺が二つのグループを繋ぎ止める役を買わされているのかは未だに理解不能である。
でもまぁ、昨年の文化祭のこと色々聞いておいて知らんぷりするのもアレだしな。
「じゃあ、一応俺もやるけど……雪川、あんまり自分勝手なことすんなよ」
「わたし……自分勝手なことなんて一度もしたことないわ」
自分勝手にメシが目当てで、グループ裏切って文化祭に参加したヤツが言えることではないが。
「梶本くん、ありがとうっ」
「ああ。春原もなんかごめんな。雪川がワガママ放題で」
「わたし……別にワガママとか言ってないのだけど。
さっきからどの口が言う、どの口が。
「さて、とりあえず文化祭の話は済んだことだし……ご飯よご飯」
「切り替えの速度がエグいな」
「遥希、今晩は何を作ってくれるのかしら? お肉があったからもちろんお肉料理よね? ね?」
雪川は俺の目の前まで歩み寄ると、今にもキスしそうな距離まで顔を近づけてくる。
ち、近い近い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます