第25話 巨乳優等生と巨乳ギャルをまとめるのは陰キャラ男子
「お、俺と春原の二人で、文化祭を纏める!?」
「うん。お願いできないかなぁって」
担任の佐藤先生からお願いされたのは衝撃的なものだった。
「私も今年からこの高校に赴任してきたから、知らなかったんだけど、この高校って文化祭とかの行事ごとに、実行委員とか作らないんだよね、春原さん?」
「まぁ、そうですね」
「え!? そ、そうなのか?」
なんか珍しいな。
普通なら、毎回行事ごとにクラス内の意見を取り纏める実行委員を立てるものだと思うし、体育祭とかはまだしも、企画とか運営が大変な文化祭で実行委員がいないってどういう……。
「うちの高校は基本的に、クラスの学級委員長と副学級委員長が、学校行事の度にクラスを仕切るようになっていて、昨年もあたしがクラスの文化祭責任者でした」
ああ……なるほど。だから昨年のクラスでは、優等生グループの春原と湯ノ原が中心に文化祭を動かしていたと。
確かに【副学級委員長】という役職があることに違和感を感じていたが、行事ごとに実行委員を立てないから、学級委員長のサポート役ということで置いているのか。
でも結果的に、そのシステムが原因でギャルグループたちの反感を買ってるのも確かだ。
なぜなら学級委員長や副学級委員長になるのは優等生だけ。
問題児寄りのギャルグループたちは、文化祭を仕切る側に誰も介入できないのだから、命令ばかりされて亀裂が生まれても仕方ない状況ではある。
「それだと今年も春原さんとか湯ノ原さんが文化祭を纏める感じになるんだよね? 実は私……昨年のこと学年主任の先生から聞いちゃって」
先生は苦笑いしながらそう呟く。
「昨年ってギャルの子たちと喧嘩して、結果的にボイコットされちゃったんでしょ?」
「は、はい……あたしの力不足で」
「そんなことはないと思うよ! でもまぁ、このシステムだと今年もギャルの子たちが可哀想だから……それで! 梶本くんを呼んだんだけど」
「……え?? い、いや! なんで俺なんですか!」
どうなったらそれで俺が呼ばれる羽目になるんだ!
「だって梶本くん、今朝のHRの前に雪川さんや人見さんと仲良くお話してたよね?」
「それは……まぁ」
「男子なのにあの子たちと話せるの珍しいなぁと思ったし、梶本くんならギャルの子たちだけじゃなく、男子側の意見も反映できると思ったの。大抜擢〜って感じ?」
むしろマジで見る目ないと思うのは俺だけか?
俺はギャルグループにおいてもただの"コック"でしかない上に、かと言ってクラスメイトの男子とも、体育の時くらいしか話せないような関係値のぼっち転校生なんだぞ俺は!
「確かに梶本くんなら雪川さんともしっかり話せるみたいだし、梶本くんが文化祭の実行委員をやるなら、ギャルのみんなの意見も、梶本くんが言えば好実ちゃんたちも聞き入れてくれるかも」
聞き入れてくれるかも……っておいおい。
「あのさ、そもそもの話なんだが」
「なに?」
「春原はさ、湯ノ原も含めた優等生女子たちのリーダー的存在なんだし、俺じゃなくても春原本人がギャルどもの意見を通してくれればいいんじゃ」
「それができたら、昨年の喧嘩は起こってないよ……」
春原は切なそうにそう言うと、それ以上は何も言わなかった。
春原も春原で……文化祭の時に何かあったのか?
「とにかく。うちのクラスだけは文化祭実行委員を作ることにして、女子グループ代表は春原さんで、男子&ギャルグループ代表は梶本くんってことで。お願いね?」
「分かりました。がんばろ、梶本くん」
「え……あ、ああ」
男子ともギャルとも、それほど仲良くない陰キャぼっちの俺が、そいつらの代表って……はぁ。
(くそ! そもそもギャルたちと近しい関係にならなければこんなことにはならなかったのに!)
俺はこの時、あのたった一杯の野菜スープが、人生のターニングポイントになっていたのだと痛いほど思い知った。
これからマジでどうなるのか、考えるだけで胃が痛い。
まずは教室へ戻った時、雪川たちにどう説明するのか考える俺だった。
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