第23話 ギャルたちの過去、ドスケベな梶本


「教えてくれ、文化祭で何があったのか」

「……昨年の文化祭の時、私らが春原沙優のグループと喧嘩したのは乃絵留から聞いた?」

「まぁ、それは一応」


 ついこの間、帰り道で雪川とそれについて話した事を思い出す。


 今のクラスとほぼ同じメンツだった昨年の文化祭。

 そこで飲食店をやることになったが、髪色について派手な髪色を禁止したい優等生側と、そのままやりたいギャルグループの間で亀裂が入った。


 とまぁ、俺が雪川から聞いたのはそれくらいなのだが、人見が悪いってどういうことなんだ?


「そもそも文化祭で飲食店をやることになってから、髪色について湯ノ原と春原から注意された時に、一番最初に反対って言ったのは私だった。それで私側についたギャルグループの奴らと、優等生ぶってるあいつらで喧嘩になって」


 な、なるほど……それで。

 文化祭の衝突は人見が先頭に立って春原たちに反抗してたのか。


「あと言っとくけど……私らは確かに春原のグループと揉めたけど、春原沙優のことは別に恨んでないから」

「え? そ、そうなのか? てっきり春原本人と揉めたのかと」

「ぶっちゃけ私が揉めたのは、優等生グループの湯ノ原好実」


 ああ、湯ノ原か……。

 確かに今朝の人見と湯ノ原の会話的に、そんな感じはするな。いかにも仲悪そうだし。


「あと……」

「って、まだいるのかよ」


「乃絵留」


「……は?」


 俺は耳を疑った。

 人見と、雪川が……喧嘩?


「私、乃絵留とも喧嘩した」

「ど、どうしてだよ! あんなに仲が良さそうなのに」

「いや、まぁ……話せば長くなるんだけど」


 人見は苦い顔をしながら、そう言う。


「私らのグループがさ、髪色変えるくらいなら文化祭はバックれようって結論になった時、乃絵留は一人だけそれに反対したの」

「は、反対?」

「乃絵留は私に向かって『余ったお好み焼きとたこ焼きが無料で食べられるのに、文化祭に行かないのは頭がおかしい』って」


 確かにたこ焼きがどうとか本人もそれは言ってたが……その状況でそれ言えるメンタルどうなってんだよ。


「そんで結局、私も含めて誰も乃絵留に聞く耳持たなくて、乃絵留だけが文化祭に参加することになった。それもあって、文化祭の後も乃絵留は、私らのグループから距離を置くようになって、私らギャルグループも乃絵留はヤバいやつだって距離を置くようになった」


 いや……雪川の奴、普通にギャルグループと仲違いしてるんだが!?

 やっぱ周りからイカれた奴判定されてんじゃねえか!


「どうやったらそんなところから今みたいな関係に修復されるんだよ……」

「まぁ……色々あったっつうか」


 人見は照れくさそうに頰を掻きながら話を続ける。


「実は乃絵留のやつ……私らの知らないところで、春原のグループに『髪色の件は許してあげられないか』ってギリギリまでお願いしてたらしくて」

「ゆ、雪川が?」

「うん。ずっと『たこ焼きが〜』『お好み焼きが〜』とか変なこと言ってたけど、本当はギリギリまで私らも参加できるように説得してくれてたって、男子たちが教えてくれて。最終的に話は纏まらなかったけど、それを聞いて私らは乃絵留のことを見直したっていうか」


 雪川は……裏でそんなことを。

 ただの食い意地張ってる天然美少女に思えて、やはり雪川は……ちゃんと考えてるんだな。


「それから乃絵留はグループに戻って来て、いつの間にかギャルグループの中心になってた。てか乃絵留ってめちゃ可愛いっしょ? 私らのグループのトップに相応しいし、ぶっちゃけあんたも春原より乃絵留派っしょ?」

「い、いや……俺は別に」

「は? 違うの?」


「二人とも……仲直りはした?」


 俺たちが話していたら、雪川が戻って来た。

 こうやって人見の話を聞いた後だと、雪川から貫禄を感じるというか……。


「ねえ乃絵留、転校生があんたよりも春原の方が可愛いだって」

「ちょ、おい! 何言って」

「ふーん……」


 雪川は興味なさそうにそう言って5限の準備を始める。


 まぁ、そりゃそうだよな。

 雪川はメシのことしか頭にないわけで。


「遥希って……春原さんみたいな明るい子が好きなのかしら?」

「いや、そういうことじゃ」

「なら、おっぱいがデカい子が好きなの?」

「で、デカいって、言い方」

「答えなさい」


 雪川は右隣から真顔で迫って来る。


「そっ……それは……まぁ……デカい方が、好きだが」

「ふーん……」


 な、なんなんだよこの会話!


「遥希って……ドスケベなのね」

「転校生、きも」


 あーもう、誰か助けてくれ、まじで。


「梶本くん!」


 んん??


 巨乳ギャルたちにイジられて助けを求めた刹那、目の前から急にど貧乳優等生が歩み寄ってくる。


 ゆ、湯ノ原? なんでまた。

 今日2回目だよな。この手のやつ。


「ちょっといいですか!」

「え、ま、まぁ……どうぞ」


「沙優ちゃんと梶本くんを、佐藤先生が呼んでました。沙優ちゃんは先に行ったので、早く梶本くんも行ってください」


 俺と、春原を担任の佐藤先生が呼んでる……? 何で?


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