第42話 ドスケベコスプレ喫茶をやるの!?


 ——翌日の朝のHR。


 担任の佐藤先生は、今日の連絡事項を順番に話している。


 先生からは今日の朝のHRで実行委員のことを話すと、事前に言われているのだが……。


「連絡事項はこれくらいかな。あ、それと。みんなに報告があって」


 佐藤先生はさっきまで読み上げていた連絡事項の用紙から顔を上げて、話し始める。


「今年の文化祭なんですが、担任の私が今年から赴任してきたばかりということもあり、色々と戸惑うこともあるだろうから、うちのクラスだけは私が前にいた高校のスタイルを引き継ぐ形にして、文化祭の実行委員を立てることにしましたー」


 先生の報告で教室中がざわつく。


 先生は上手いこと「自分がこの高校に来て初めての文化祭だから」と、言ってくれているが、文化祭実行委員を立てた本当の目的は……。


「こっちで決めさせてもらったんだけど、実行委員は春原さんと、雪川さんっ」


 そう、優等生グループとギャルグループの関係改善が一番の目的である。

 そんな中、一番の謎であるのが。


「それと、梶本くんっ」


 クラスメイトの視線が一気に俺の方へと集まる。


 一番の謎……それは、ぼっちモブ陰キャの俺まで実行委員になっていることだった。


 ☆☆


「先生はああ言ってたけど、絶対昨年の事件が関係してるよな」

「だって女子の半分が来なかったなんて前代未聞だし」

「てか、梶本って……なんで?」


 HRが終わった後も実行委員の話で持ちきりだった。

 まあ、今回の件について薄々勘付いている奴らもいるみたいだな。


「ちょいハルキ」

「ん? ひ、人見?」


 後ろの席から人見が俺に話しかけてきた。

 なんだろう。雪川が席を外しているから暇なのだろうか。


「昨日の会議さ、どうだった? べ、別に興味があるとかじゃないけど……やる事とか決まったん?」

「えっ……ああ、まぁ」


 今年の文化祭は【ドスケベコスプレ喫茶】だ……なんて平然と口にしたら、人見にぶん殴られる未来しかない。


 だが、自分から提案した以上、ハッキリ言わないと……よし。


「えっと……き、喫茶店方面で考えてる、かなぁ」

「喫茶店? へー、そうなん」


 俺は普通にはぐらかす。


 や、やっぱ、言えるわけねえ……。


 と思った矢先、急に俺の真横からヤツの香水の匂いが。


「香奈、今年の文化祭は"ドスケベコスプレ喫茶"よ」


「は……?」


 席に戻って来た西洋風(おバカ)美少女は、開口一番に何の恥じらいもなくドスケベとか言い出す。


 あー、終わった。

 俺は完全に死を覚悟する。


「ちょ、乃絵留? なに急に言い出してんの? ど、ドスケベ?」

「遥希がやりたいって言うの。ドスケベコスプレをわたしと春原さんにしろって言ってきて」


 乃絵留は俺という死体にわざわざ油と火を投げ込んでくる。


「いや、待て! そんなこと言ってないんだが!!」

「おい……私がいなかったからって、乃絵留に好き放題言ってくれたみたいじゃん」


 ポキポキと人見の指が鳴る。

 マジで、や、やべっ!


「梶本くん! ちょっといいですか!」


 急に俺の席の前に現れたロリ。


 今度は湯ノ原好実かよ……次から次へと癖強キャラたちが、集合しやがって。


 でも助けられたな……サンキューロリ。


「おいロリ、今私らがハルキと話してんだけど」

「好実は梶本くんにお話があります! 人見さんには声をかけてません!」

「チッ……」


 うわ、相変わらず仲悪いなこいつら。


「え、えっと、話って文化祭のこと?」

「はい! 今年の文化祭を何をやるのかなと!」

「そ、それなら同じ実行委員の春原さんに聞けばいいんじゃないの? 仲良いんだし」

「その、沙優ちゃんにも聞いたら急に顔を真っ赤にして『まだ話せない』の一点張りで。なんかドスなんたらがどうとか一人で呟いてましたけど」


 ど、ドス……。

 思い当たる節しかない。


(ちょっと待て……俺は単にコスプレ喫茶って言っただけのはずなのに、いつの間にかこの美少女アホ二人の中では、ドスケベコスプレ喫茶に変換されてるんだが……!)


「それはそうと! 今日の1限目は自習になったので、そこで文化祭の話をみんなで会議するのはどうでしょう!」

「あ、ああ。分かった、けど」

「沙優ちゃんにも言っておきますねー!」


 嫌な予感が漂う中、1限の自習で文化祭について話し合いが行われることになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る