第41話 ドスケベすぎる閑話休題


 フラッペを吸って、大口でドーナツをムシャムシャ食べる……それを繰り返す乃絵留。


 その西洋美少女な見た目に反して、あまりにもガッつきすぎて完全なる解釈不一致を起こしている。


(こんなにガッつく割に、俺の料理を食うまでは惣菜パン一個だったのが不思議だ)


「なに遥希……わたしの顔にチョコでも付いてるのかしら?」

「いや、そうじゃないんだが」

「ん?」

「いや、乃絵留ってさ。メシへの執着凄いのに俺と初めて話した時は、パン一個だったなぁと」


 コスメなどの別のことに回すために貯金していた……と言っていたが、この食い意地からしてそれで我慢できるようには思えないのだが。


「そうね、事情は色々あるけれど……コスメやファッションのために貯金をする時期もあれば、時には我慢しないもあるってことね」

「じ、時期?」

「ああ! つまりってことだね乃絵留ちゃん!」

「……っ」


 沙優が言ったことが当たっているのか、ジト目になってドーナツを口にする乃絵留。


「あたしもダイエットよくするから気持ち分かるなぁ〜。帰りにスノト寄るのやめよーってなるし!」

「だからわたしは!」

「もぉ、隠さないでいいよ乃絵留ちゃん」


 そもそもこの二人の身体つきでダイエットとか……する必要あんのか?

 胸はとんでもなくでっっかいものの、腰回りはしっかり細いわけで。


「そ、そうね……ダイエットと言えば春原さん? 前から少し気になったのだけど、その無駄に大きいお胸のサイズはどれくらいなのかしら?」

「ぶぶぉっ!」


 俺は飲んでいたフラッペが吹き出そうになるのを必死に手で押さえる。


 な、なに聞いてんだこいつは!


 乃絵留は少し気になったと言うが、前男子からしたら喉から両腕が飛び出そうなほど知りたい情報である。


「ば、バストって乃絵留ちゃん、それは……」

「あらあなた……わたしの節約行為をダイエットだと決めつけた上に、わたしに恥をかかせておいて、自分のことは何も言わないなんておかしいと思うのだけど」


 乃絵留に『恥』という自覚があることの方がおかしいだろ。


「うぅ……言わないとダメ?」

「まぁ? さすがのわたしもモラル的に耳打ちで教えるだけでも許してあげるわ」

「……じゃ、じゃあ」


 隣り合う二人が目の前でゴニョゴニョと耳打ちをする。

 なんだ。男の俺は仲間はずれかよ。


 ま、最初から期待はしてないけどな。


「なるほど……93よ、遥希」

「ちょっと!!! 乃絵留ちゃん!!!」


 一瞬で裏切った乃絵留に、沙優は間髪容れずに突っ込んだ。


 きゅ、きゅうじゅうさん……だと!?

 そんなの、富士山どころの騒ぎじゃねえぞ!


「さっきのモラルがどうとかはどこ行ったの!!!」

「はい? わたしはただ数字を口にしただけよ? 別にあなたのナニの大きさとは言ってないわ」

「むぅー! ひどいよぉ乃絵留ちゃん」

「ちなみにわたしは95よ。わたしの勝ちね」


 どんだけ沙優に対抗心あるんだこいつは。

 サラッと言ったけど、乃絵留も……で、デカスンギんだろ……。


 勝手にとりを始めて、一方的に勝ち誇る乃絵留だった。

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