第43話 ドスケベ会議スタート


 ——1限目 自習。


 俺と乃絵留と沙優の3人は実行委員として、黒板の前に立つ。


 俺はまだしも、乃絵留と沙優というクラスの二大グループをまとめるトップが同じステージに並ぶという、異様な光景。


 さすがのクラスメイトたちもその異様な空気感を察しているのか、教室中に緊張感が走った。


「あの二人が並ぶとこんな凄いんだね」

「もう山脈じゃん」

「わたしらじゃ絶対あの山は再現できないよ……」


 いや……緊張感というよりも"圧倒"されてるな。変な意味で。


「えーっと! それではこの自習の時間を使って、文化祭実行委員から話をしたいと思います」


 沙優の呼びかけで、教室中が静かになった。

 さすが絶対的委員長。一言だけで黙らせるとは。


 だがその中、ギャルグループの面々だけはギロッとした目を光らせながらボソボソと身内で何やら話をしているのが目につく。


(なんだあれ……昨年みたいなことにならないか、心配なのか?)


 そもそも今回の文化祭における一番の問題は、ギャルグループに参加してもらえるかどうかと、文化祭の内容に賛同を得られるかどうかの二つであり、それを解決するにはやはりこの二人の存在に頼るしかないわけで。


(そんな状況なのに、肝心のこいつら二人がコスプレ喫茶のことをドスケベコスプレ喫茶と勘違いしてるのは非常にまずいような気もするのだが……)


「今からみんなで話し合って、文化祭にやるものを決めたいと思います! な、何か案がある人……」


 ま、まぁ、コスプレ喫茶はあくまでこちら側の提案であり、もっとふさわしい案が出たらそれでいい。


 そう思って見回すが、誰も手を挙げない……というか、とても挙げられる空気じゃないよな。


 こうなったらこっちから言うしか。


「みんな……聞いて欲しいの」


 その時——俺の隣でずっと黙っていた乃絵留が、急に口を開いた。

 普段は身内だけとしか喋らない乃絵留なだけに、クラス中が驚いた顔をしている。


「……わたしに一つ、案があります」


 乃絵留は黒板の方を向いてチョークを手に取ると、黒板にでっかく『コスプレ喫茶』と書いた。


「……コスプレ喫茶は……どうかしら」


 俺は一人げにドスケベと書かなかった事を安堵したが、クラスの反応は賛否に分かれた。


「ゆ、雪川さんが……コスプレ!?」

「見たい、見たすぎる」


 という下心丸見えの男子たちの声と、


「コスプレは……ちょっとね」

「うーん。私も……恥ずかしいし」


 優等生グループの女子たちの声、そして。


「…………」


 人見も含めたギャルグループの面々は、真顔で何の反応を示さなかった。


「えと、ゆ、雪川さんの案が出ましたが、皆さんどうでしょうか!」


 進行の沙優が訊ねても、やはり状況は変わらない……これ、マジでどうなるんだ……。


 すると、急に一人、手を挙げる生徒がいた。


「ちょいいい? 私も話したい事あんだけど」


 手を挙げたのは……人見、だった。


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