第44話 ドスケベ文化祭対決の行方は
「えと、じゃあ人見さんどうぞっ」
堂々と手を挙げた人見に、沙優から発言権が与えられる。
人見のやつ……一体何を。
「私は……乃絵留の意見に賛成だから」
そう言った途端、周りの生徒たちは腰が浮く勢いで驚きの表情を浮かべる。
表面的に考えたら、雪川乃絵留の意見に人見香奈が賛成するなんて、至極当然のことなのだが、コスプレ喫茶という内容が内容なだけに……あの人見の賛成の意を表明したのは誰もが意外に思ったに違いない。
「人見さん賛成だって」
「でもコスプレだよ? そりゃ、いつもギャルの格好してる人たちはコスプレしても構わないのかもだけど」
「ど! ドスケベだ……」
クラス内の空気はさらに混沌を極めて行きそうになった……が。
「んじゃ、アタシも賛成」
「あーしも」
「乃絵留と香奈がやるってんなら、あたしらもやるし」
次々とクラスのギャルたちが口を揃えて賛成していく。
これが仲間意識ってやつか。
もうギャルたちにとって、コスプレとかドスケベコスプレとかはどうでも良くて、とにかくギャルグループのトップたちが提案した内容を通すという
そして、ギャルたちがコスプレをするとなると……次に乗って来るのが。
「俺もコスプレ喫茶いいと思う!」
「オレも賛成! 1年の時はなんか焼くだけで地味だったから今年は派手なのがいいし!」
「俺も俺も」
思春期特有のドスケベな思考を持ち合わせた男子たち。
俺も含めて性欲のままに生きる俺たちにとって、クラスメイトの女子がコスプレするとか見たいに決まってる。
とまぁ、ここまでは俺が前に話した通りに進んでいるが……問題は。
「ちょっと待ってください!」
思った通り。やっぱりヤツが口を出して来る。
ロリ優等生の、湯ノ原……好実。
こいつがここで反論したら、優等生グループ対ギャルグループの構図がより濃くなるだろう。
ここからはさすがに事前に想像はできない。
どっちに転ぶのか……どっちにしても俺は、見守るしかないな。
「こ、コスプレなんて! 好実は恥ずかしいですよっ! ねえ沙優ちゃんっ!」
「え、えと」
昨日スノトで「あたしもドスケベコスプレをするから!」と大声で宣言した張本人に、それを聞いてやるな。
「なあに湯ノ原ぁ。恥ずかしいとかマジ?」
湯ノ原を煽るように、余裕の笑みで人見が言う。
え、えらいことや……戦争じゃ……。
「は、恥ずかしいですよ! 当たり前です!」
「んじゃ、今年はアンタらがバックれれば? 昨年は反論する私らをそうしたようにさ」
「……っ! こ、好実たちはあなた方のような愚行はしません!」
「なら腹括んなよ。男子と私らは賛成してるんだから、反対してんのはアンタら優等生のお嬢さんだけだけど?」
人見はまるで昨年の件をやり返すように鋭く言い返し、完全に普段とは形勢逆転しているように思えた。
これは……決着だな。
「むぅ……! やっ、や、やってやりますよ! 好実もコスプレ着てやりますよ!」
湯ノ原が折れて「ええー」と優等生グループの女子から引き気味の声が上がる。
でもこうして、上手いこと文化祭の内容は決定した。
ここから1ヶ月後の文化祭に向けてコスプレ喫茶の準備をするわけだが……いやまぁ、ここからが大変なのは間違いない。
俺はチラッと乃絵留の方を見るのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます