第45話 ドスケベなデートのお誘い(ドスケベ)
バッチバチの自習の時間が終わり、クラス内の空気はまさに雨過天晴。
優等生グループ側の湯ノ原としては、みんなの前で悔しい思いをしたはずだが、これもクラスのためだ。
でもまぁ、他の奴らがどう思っているかは知らないが、別に俺は優等生グループが100%悪いとは思っていない。
飲食店をやる上で、清潔感を重視するから髪の色を戻して欲しい、という優等生グループの主張も間違ってはいないと思うし。
ただ説得する上で、結果的に共存ではなくギャル達を除け者にしてしまったことには問題があった。
(まぁ、今年はコスプレ喫茶になったわけだし、髪色とかの問題で喧嘩にはならないと思うが……これで二大グループが仲良しこよしになるわけでもないんだよな)
それどころか、さっきの人見VS湯ノ原のレスバによって、クラス内ではより一層グループ間の距離が開いたような気もする。
「ね、遥希くん。文化祭の企画書を書いて欲しいって、先生が言ってたよ」
「ああ。分かった、今から書く」
「乃絵留ちゃんも一緒に書いてくれないかな?」
「……面倒だから嫌よ。あと下の名前で呼ばないで」
相変わらず乃絵留は素っ気なくそう言うと、席を立った。
「ど、どこ行くんだよ」
「おトイレよ」
そこはお手洗いって言えよ……ほんと、こいつは。
乃絵留はこんなだし、クラス内の女子グループもバラバラだし……はぁ。
「このクラスを日頃からまとめてる沙優は、いつも大変だよな」
「大変? うーん、そうかな」
「昨年の文化祭もこんな感じでクラスがピリピリしてたんだろ?」
「ま、まあね」
沙優は苦笑いしながら少し人見の方を見る。
「なに、文句あんの」
「う、ううん、なんでもっ! それより遥希くん、企画書の方、やろっか」
沙優は人見に睨まれておどけながら俺の方に目線を戻した。
同じ釜のメシを食ったとはいえ、そう簡単に仲良くなれるわけないか。
俺は沙優と二人で文化祭でやるコスプレ喫茶について、書き込んでいく。
「昨日の遥希くんの提案通り、コスプレ喫茶に決まったね?」
「湯ノ原が上手いこと乗ってきたのも一つの要因かもしれないけどな」
「こ、好実ちゃんはさ! いつも周りに厳しいけど、根は本当に優しい子だから! 勘違いしないで欲しいっていうか!」
「あ、ああ。そんな悪いようには思ってないから安心しろって」
どうやら勘違いされたらしい。
沙優からしたら湯ノ原は親友であり、肩を持つのは当然ではある。
「しっかし、湯ノ原といい乃絵留といい、どうしてこんなに癖の強い生徒ばかり一つのクラスに集まるんだこの高校は」
「あはは……生徒少ないから仕方ないよ」
「ったく、全員が沙優みたいにしっかり者の女子ならいいんだけどな」
「へ? あ、あたしってしっかり者、かな? えへへ」
「ねえあんたらさ。私の前でイチャつくのやめてくんない」
「い、いちゃついてなんてないよ!」
後ろの席の人見はやけに機嫌が悪そうで、沙優もたじたじだった。
沙優といちゃついているように見えるのか……悪くないが。
「そ、それよりさ、遥希くん」
「どうした?」
「放課後……良かったら」
「ん?」
「えと、乃絵留ちゃんが言ってた、ドスケベなコスプレってものがどんなものか知りたくて……放課後、一緒に探して欲しいなって」
何かと思ったら、とんでもないデートのお誘いだった。
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