第30話 ぶつかり合う二大美少女(爆乳)
俺と春原がアパートまで来た時には、すでにギャルグループの二人が玄関先にいた。
春原と雪川がついに……。
「「…………」」
お互いにそれ以上会話を交わすことなく睨み合う。
ついにこの時が。
「……遥希、鍵を開けてもらえるかしら」
「あ、お、おお」
俺は若干焦りながら財布の中にある鍵を取り出すと、鍵を開けて3人を部屋に迎え入れる。
「ど、どうぞ」
「お邪魔しまーす」
笑顔で入る春原。
そんな彼女とは対照的に……あちらの二人は。
「「………」」
相変わらずムスッとした顔で部屋に入る。
空気悪りぃ……マジでどうにかならないものか。
春原のことを警戒してるのもあるだろうけど、いくらなんでも愛想なさすぎだろ。
狭い部屋なので、とりあえず部屋の中央にあるちゃぶ台を囲むように座ってもらうことに。
ちゃぶ台を地面にしたならば、3方向から聳え立つ6つの超ド級の山脈が、連なっているように見える。
もはやここはちょっとしたジオラマだ。
でっっっけぇ。
「ちょい転校生、何こっち見てんの」
「あ、ああ、すまん。俺は適当に……冷蔵庫にあるもので何か作るから。昨日の食材もまだあるし。ちょっと待っててもらっていいか?」
「うん、ありがとう梶本くん」
さっきからさすがに春原はいつも通りを装っているものの、雪川は明らかにいつもと違う。
俺が晩飯の話をすれば少しは「あれがいい、これがいい」とか言うと思ったんだが。
とてもじゃないが、和やかな空気にはならないみたいだ。
「……春原さん」
そんなことを考えながらキッチンでエプロンを巻いていたら、まさかの雪川から春原に話しかけた。
「ひゃ、ひゃいっ」
さすがに驚いたからか、春原はしゃっくりでもしたのかと思うほど、変な返事をする。
「あなた……」
「え、えと……?」
「好きな料理は……何かしら」
あまりにも普通……というか、この空気でする質問か? それ。
「お、お肉料理が、好き……かな」
「……あらそう。奇遇ね。わたしもよ」
なるほど……肉料理でそのデカい胸たちは育ったと……。
「………」
「………」
そして案の定は会話終わり。
来る前から分かり切ってたことだが、やっぱりダメそうだな。
「あーもう、まどろっこしい! 乃絵留は黙ってろし」
この空気に耐えられなくなったからか、人見が急に声を上げる。
「あんさ! 聞きたいことあんだけど!」
「う、うんっ」
ヤバいやばいやばいやばい。
人見のあのブチギレ様からして、喧嘩が起きちまう。
でも、俺にできることなんて……。
「お前さ……」
人見は春原を睨みつけながら顔を近づけていく。
「もしかして……私らの仲間になりたいん?」
……は? 何言ってんだ……このギャル。
「へっ! あたしが、ギャル!?」
ダメだ。人見なら雪川よりはコミュ力あってマシな会話をしてくれると思ったが……人見も普通にアホの類だ。
春原がギャルなんかに憧れてるわけ——。
「えっと……あはは、確かに、憧れてるかも」
……はあ?
あー、ダメだ。こっちもアホだ。
「ま? や、ヤバいよ乃絵留……こいつ、カチコミじゃなくて優等生のやつら裏切る気だし!」
「香奈、落ち着いて……おそらく違うわ」
「へ? そうなん?」
クラス内女子グループトップのアホとアホの会話を聞きながら、とりあえず俺は晩飯の支度を始めた。
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